阿部一二三、兄の意地 「努力の天才」きょうだい金メダル結実

男子66キロ級で優勝し喜ぶ阿部一二三。兄と妹そろっての金メダル獲得となった=日本武道館
男子66キロ級で優勝し喜ぶ阿部一二三。兄と妹そろっての金メダル獲得となった=日本武道館

先に金メダルを取った女子52キロ級の詩が会場で見守る中、男子66キロ級の阿部一二三は積極果敢な柔道で決勝の畳を支配した。技ありを奪ってリードしても、攻撃の手は最後まで緩めず、「兄妹での金メダル」を結実させた。

代表候補の一角だった2016年リオデジャネイロ五輪代表を逃し、「東京までぶっちぎりで勝つ」と悔しさを原動力に17、18年世界選手権を2連覇。豪快な攻撃柔道に磨きをかけた。

しかし、次第に海外勢のマークが厳しくなった。対策を練られ、得意の形が作れず、思うように投げられなくなった。国内では丸山城志郎(ミキハウス)が立ちはだかった。19年の世界選手権で世界王者のタイトルを奪われ、五輪代表にも暗雲が垂れ込めた。

打開の道を探り、足技の強化に本腰を入れた。昨年12月の丸山との代表決定戦では切れ味が鋭くなった足技がさえた。代表決定後、先に決まっていた詩の存在が「すごく刺激になった」と明かした兄は、日本史上初の激戦を乗り越えて精神的にもたくましくなった。

6歳からの柔道人生はエリートではなかった。小学生のときは女子選手にも負けた。座右の銘は「努力は天才を超える」。日本武道館の畳で体現した。(田中充)

日本初 兄妹で「同日金メダル」 阿部一二三と詩

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