土中で2年の眠り「漂流クジラ」の価値ある行く末

大阪湾で10メートルを超える鯨類の漂流が確認されるのは珍しく、地元の大阪市立自然史博物館(同市東住吉区)が「学術的な価値がある」として引き取りを希望。骨格標本として保存することになった。

同館は過去にもクジラの死骸を引き受けたことがある。平成22年に大阪湾を漂流していたマッコウクジラを、27年には同府岬町で座礁したザトウクジラなどを骨格標本として所蔵している。

〝お披露目〟は数年後

今回、処分を免れたクジラは17日午前、係留されていた阪南港から台船に乗せられ、約20キロ離れた堺泉北港に到着。近くの埋設場所に運ぶ作業が始まった。

台船で運ばれるクジラの死骸=17日午前、堺市西区(小泉一敏撮影)
台船で運ばれるクジラの死骸=17日午前、堺市西区(小泉一敏撮影)

発見から1週間以上が経過しており、腐敗の進行は相当だった。表面は赤茶色で所々が黒く変色。腹に畝(うね)と呼ばれるヒゲクジラの特徴といえる筋が幾重も走っているのがわずかに見え、かろうじてクジラだと分かる状態だった。

異臭が充満する中、マスク姿の作業員らはクジラの体が崩れないよう慎重に作業に当たった。クレーンで台船からネットに包んだクジラをつり上げて大型トラックの荷台に載せ、そのまま埋設場所に移送した。

クジラは土をかけられ、これから約2年かけて微生物によって肉が分解されるのを待つ。漂流クジラの〝旅〟はいったん休止となるが、数年後には骨格標本としてお披露目されることになりそうだ。

調査に立ち会った同館の和田岳・主任学芸員は「大阪湾の生き物について記録していくことが、私たちの重要な役割だ」と意義を強調した。(小泉一敏)

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