全長10メートルを超えるクジラの死骸が漂流しているのが7月上旬、神戸市の須磨沖で見つかった。潮流に乗って大阪湾を漂っていたが、航行する船舶の安全確保のため大阪港湾局が回収。こうした死骸は廃棄物として焼却処分されることが多いが、今回の個体は立派な大きさでもあり学術的な価値が高いと判断され、ある方法で有効活用されることになった。「漂流クジラ」はどこに向かうのか。
関係者「事故」と困惑
「クジラの死骸のようなものが漂流している」。7月9日朝、須磨沖のタンカーから神戸海上保安本部に一報が入った。
クジラの死骸は、体内にガスがたまって爆発する恐れもある。同保安部は周辺を往来する船舶に注意を呼び掛けるとともに、漂流の状況を注視。大阪府内の海域に入ったことから、大阪港湾局が11日に回収し、同府岸和田市の阪南港で係留された。
港湾局によると、クジラの死骸は一般廃棄物にあたる。廃棄物処理法に基づき、港湾を管理する大阪府が処分することになった。クジラのような巨大な漂流物は、裁断して焼却処分するのが通例だ。
死骸の陸揚げには費用がかかり、処理施設への運搬にあたって重機の手配も必要になる。漂着を事前に予測できないため、港湾局の担当者は「いきなり事故に遭ったようなものだ」と困った表情を見せた。
骨格標本として保存へ
港湾局は死骸を回収したことを、鯨類の調査や資源管理をしている水産庁に報告。そのまま処分される可能性もあったが、別のルートで活用することになった。
死骸を調査した日本鯨類研究所(東京)によると、今回の個体は体長11・21メートル、重さ約8・5トンの雄でヒゲクジラの仲間とみられる。鯨種は皮膚片のDNA型鑑定で確定させる。
食用とされているニタリクジラの可能性があり、高知沖などに生息していることから、何らかの理由で瀬戸内海に迷い込んだのではないかと推測されるという。