一聞百見

ブルートレインも「運んだ」技術 アチハ常務取締役・辻野卓さん

運搬される小田急のロマンスカー。作業は主に夜間帯に行われる(アチハ提供)
運搬される小田急のロマンスカー。作業は主に夜間帯に行われる(アチハ提供)

ドライブをしていると山の上でゆっくりと回っている風力発電の風車を見ることがある。あんな所に巨大な物をどうやって運んで建てたのか。それができる会社が大阪に本社を持つアチハだ。もともとは重量物運搬の下請け会社だったが、20代で会社を継いだ阿知波孝明社長が、その高い技術力を生かしながら、事業を多角化させてきた。その改革を支えたのが大学の同級生で、社長に請われて片腕となった常務の辻野卓さんだ。

「不可能という言葉は一番言いたくない。うちが『運べません、無理です』と言うと、そこで風力発電の計画は終わってしまいますから」

風車をバックに記念写真におさまる辻野さん(右から2人目)。建設場所は全国各地にわたる(アチハ提供)
風車をバックに記念写真におさまる辻野さん(右から2人目)。建設場所は全国各地にわたる(アチハ提供)

大きいタイプなら支柱の高さは100メートル、ブレード(羽根)の長さは50メートルを超える風力発電の風車。支柱を4分割するなど、何個かに分けた部材をトレーラーで陸送する。狭い交差点、急な山道、細い住宅街を通り抜けて運ぶ技術を持つ会社は、国内では数少ない。

「難関はカーブと高さ。運搬物が当たるかどうかは1メートル以下の差です。木を切ったり、建物を移設したり、信号機をちょっと動かす場合もあります。交差点が曲がれないとなれば、角の田んぼを借りて道にすれば通れるという提案をすることもあります」

「不可能とは言いたくない」と話す辻野さん=大阪市住之江区(永田直也撮影)
「不可能とは言いたくない」と話す辻野さん=大阪市住之江区(永田直也撮影)

風力発電事業については、風車の部材を運ぶだけでなく、設置予定の場所までの運搬が可能かどうかの調査をはじめ、風車を建てる工事全般の施工計画立案、風車の組み立て、建てた風車のメンテナンスなどを一括して請け負っていることが、他社にはない特徴だ。

「風力発電は最初の計画から4、5年、長ければ6、7年かかります。事業化までには多くの許認可が必要で、一括でやることで、お客さんにとっては『アチハに言っとけば全部やってくれる』となり、競争力も高められるのではと思っています」

大きくて重い物を運ぶという得意分野を生かしながら、再生可能エネルギー普及に貢献できるとして取り組み始めた風力発電事業。建てた風車は平成18年から、すでに300基弱に上る。受注は計画段階の案件も含めると、3、4年先まであるという。

「風車を1基、運搬、組み立てまで2、3週間かかります。ただ風が強くて、ブレードを上げられないといったこともあります。風が強く吹く場所だから風車を建てるので、これは仕方がない。現場は全国各地です。大阪の会社ですけど、熊本で風車を建てて帰ってきたら、次は北海道へ行くということもあります」

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