国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会が22日、「明治日本の産業革命遺産」をめぐり採択した「強い遺憾」決議は、韓国の激しいユネスコ外交の結果だ。背景には、ユネスコが近年、世界遺産に個人や地域の視点を展示する「説明戦略」を重視していることがある。この戦略が、「犠牲者の記憶」が不十分だという韓国の主張を後押しした。(パリ 三井美奈)
決議根拠となったユネスコの専門家報告書は、産業革命情報センターについて「犠牲者の記憶をとどめる目的に適切に応じた展示が、現状では皆無」と指摘。説明戦略に「懸念を示した国からの専門家が関与せず、助言も求められていない」として、韓国側と対話を進めるよう促した。
決議案は当初、日本に「報告書の結論を実施せよ」と勧告する内容だった。日本側の主張を受け、「報告書の結論を考慮」して、適切な決定を実施せよという表現に修正された。