「五輪には忘れ物がある」サッカー吉田麻也、9年ぶり大舞台 - 産経ニュース

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「五輪には忘れ物がある」サッカー吉田麻也、9年ぶり大舞台

日本―南アフリカ 後半、空中で競り合う吉田(5)=味の素スタジアム
日本―南アフリカ 後半、空中で競り合う吉田(5)=味の素スタジアム

サッカー男子日本-南アフリカ戦で、DF吉田麻也(32)がキャプテンマークを腕に巻いて9年ぶりに五輪の舞台に帰ってきた。2008年北京大会と12年ロンドン大会を経験、16年リオデジャネイロ大会は後進に譲ったが、平和の祭典ではいまだにメダルを手にしていない。「五輪には、忘れ物がある」。周囲にそう告げた32歳は、今回を最後の挑戦と定めて25歳以上のオーバーエージ(OA)枠で出場。初戦を無失点に抑え、白星を飾った。

南ア選手に新型コロナウイルス感染者が出て一時は試合の実施自体が危ぶまれた1次リーグ初戦。後半、自陣に迫るボールを頭ではじき、1点を守り抜いた。

観客のいないスタジアムは、演出のため事前に録音された声援がうっすらと流れるのみで、本来の熱狂とは程遠い。それでもチームに欠かせない守備の柱は集中を切らさなかった。

代表として国際Aマッチ100試合以上出場のベテランも、五輪では悔しい思い出が先行する。19歳で出場した北京大会では3戦全敗。中心選手として臨んだロンドン大会では3位決定戦で韓国に0―2で敗れ、目前でメダルを逃した。リオ大会は出場しなかったが、未練は残っていた。

今年6月、地元・長崎市の行きつけの飲食店「レッケル」を訪れた吉田は、店主の松島伸一さん(54)に「若手に譲るべきだとも考えた」と打ち明け、こう言った。

「あと一歩のところでメダルを逃した悔しさは、どうしても忘れられない。五輪の屈辱は、五輪で晴らしたい」

「いつか生のメダルを見たかねえ」と松島さんが水を向けると、「今回は絶対に取りに行きます。待っていてください」と力強く断言したという。

昔から噓をつかない男だった。

愛知県立豊田高(豊田市)で担任を務めた青木順一さん(53)は3年時の進路希望調査を思い出す。

第1志望は「名古屋グランパスエイト」。第2志望以下は空欄で、担任への一言の欄には「任せとけ!」とだけ書いてあった。吉田はほどなくしてグランパスのトップチームに昇格。今や海外のトップチームで活躍するまでになった。

17日には有観客の意義を改めて訴えた硬骨漢。「一番の悔しさ」と位置付ける9年前の記憶を乗り越えられるか。吉田は約束を果たしてきた男だと、身近にいる人は、みんな知っている。(竹之内秀介)

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