スエマエペアの愛称で親しまれたバドミントン元日本代表の末綱聡子さん(40)は、今夏、東京五輪に教え子を送り出す。自身は前田美順(みゆき)さんと組んで出場した2008年北京五輪女子ダブルスで当時日本勢最高の4位だった。今度は、東京五輪女子ダブルス代表の福島由紀、広田彩花(さやか)組(丸杉Bluvic)の所属先のコーチとして、フクヒロが目標に掲げる「金メダル」獲得の瞬間に立ち会いたいという。
2008年北京五輪女子ダブルス準々決勝は本人らも、その「未来」を予想していなかった。スエマエは当時世界ランキング1位で金メダル候補の大本命といわれた中国ペアから大金星を奪取。「勝つイメージがなかった」と末綱さん。第1ゲームを大差で落としたことで気持ちが吹っ切れた。完全アウェーの中、第2、3ゲームを奪って逆転勝ち。勝利を収めた瞬間は2人してコートでうれし涙に暮れた。
日本勢の悲願だったメダルまであと1勝-。そう意識したら、雑念がわいた。翌々日の準決勝で敗れた。しかし、4位という結果は当時の日本勢最高成績だった。末綱さんは「メダルを取れなかったのは、悔いがないといえば噓になるかもしれない。けど、あの舞台で最高の試合ができたことには悔いはない」と振り返る。
スエマエの活躍が一つのきっかけとなり、日本の女子ダブルスは12年ロンドン五輪で「フジカキ」こと藤井瑞希、垣岩令佳組が日本史上初の銀メダルを獲得。16年のリオデジャネイロ五輪では「タカマツ」こと高橋礼華(あやか)、松友美佐紀組が金メダルに輝くなど飛躍を遂げた。
末綱さんはロンドン五輪に出場後、13年9月に第一線を退いた。現在は丸杉Bluvicで世界ランキング1位の福島、広田組のコーチを務める。初の五輪に挑むフクヒロに、自身が経験した五輪のことは「プレッシャーになるから」と伝えていないという。それでも、フクヒロの国際大会に帯同してきた身として願っているのは、東京五輪でのメダル獲得だ。
「取ってくれると信じています。喜びってどんななんだろうって。雰囲気にのまれず、力を出し切ってほしい」(運動部 久保まりな)