Q 40代の女性です。下腹痛と不正出血があったため4月に婦人科のがん検診を受け、その後、低悪性度子宮内膜間質肉腫(にくしゅ)の疑いと診断されました。そして6月に子宮全摘と卵管摘出の手術を受けました。子宮内膜間質肉腫についてもう少し詳しく教えてください。
A 子宮体部の内腔(ないくう)を覆う内膜腺上皮の直下に子宮内膜間質細胞があります。また、この細胞層の下には子宮壁の主要な組織となる、子宮平滑筋層があります。子宮内膜間質細胞が腫瘍化すると、子宮内膜腺上皮を子宮内腔方向へ押し上げるように増殖し、次第に増大して子宮内腔を充満するようになります。急激に増大するため下腹痛が起きたり、子宮内膜を破って不正出血を起こしたり、腫瘍壁の一部が崩れると悪臭のある帯下(おりもの)が出ることもあります。
Q どのように診断しますか。
A 子宮内腔に細い棒状のチューブを挿入し、細胞を擦過(さっか)採取したり、金属製の細い棒状の鋭匙(えいひ、採取器具)で組織を削り取ったりして病理診断します。子宮体がんの95%くらいは子宮内膜腺上皮由来の類内膜腺がんですが、5%くらいは子宮内膜間質細胞や平滑筋細胞などの非上皮細胞(間葉系細胞)が由来の悪性腫瘍で、肉腫と呼ぶこともあります。頻度の少ない特殊型のため、子宮内膜間質肉腫と確定するためには、免疫組織染色をしてこの肉腫に特有なパターンの発現を確認します。
MRI(磁気共鳴画像装置)などの画像検査をすると、類円形の腫瘍が子宮内腔に向かって膨らみながら隆起するように増殖していれば子宮内膜間質肉腫が強く疑われます。
Q 低悪性度子宮内膜間質肉腫の低悪性度とはどんな意味があるのでしょうか。
A 子宮内膜間質肉腫には、腫瘍細胞が毛細血管やリンパ管を経て遠隔転移する「経過の悪いもの」と、子宮内腔で急激に増大するけれども遠隔転移はほとんどせず、子宮と両側卵巣を完全摘出すれば再発が少ない「経過のよいもの」の2種類があります。手術前のCT(コンピューター断層撮影)検査やPET(陽電子放射断層撮影)-CT検査で遠隔転移がなければ、暫定的に低悪性度子宮内膜間質肉腫疑いと診断します。正確には、手術後の摘出物の詳細な病理診断で低悪性度か否かを鑑別します。
Q 手術や術後治療はどうすべきでしょうか。
A 子宮内膜間質細胞は、卵巣由来の女性ホルモン(エストロゲン)によって腫瘍の増殖が促進されますから、閉経前であっても、子宮と両側卵巣の切除がベストです。しかし患者さんが20~40歳前半だと、子宮全摘に加えて両側卵巣切除が必要でも、患者さんの同意を得るのは容易ではありません。
臨床現場では、子宮全摘に同意が得られても、両側卵巣切除を見合わせることは少なくないのです。再発を抑制するために、数年にわたって卵巣機能を抑制したり、病巣遺残がある場合には高単位黄体ホルモンを内服したりしてもらいます。患者さんの希望のままに卵巣を温存して、女性ホルモン抑制もしないと再発リスクが高くなります。少なくとも5年間は慎重な経過観察が必要です。
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回答は、がん研有明病院の瀧澤憲医師(婦人科前部長)が担当しました。
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