オンライン帰省で片付けも 親と揉めない声かけのコツとは

新型コロナウイルスが世界を覆って2回目の夏が来た。国内では高齢者を中心にワクチン接種が徐々に進むものの、変異株拡大の不安から故郷への帰省を2年連続で断念した人もいる。年齢を重ねる親族の健康状態や、帰省できれば手伝えていた実家の片付けも、気になりながらできていない人たちの心配は募る。そこで、パソコンやタブレットを使ったビデオ通話の「オンライン帰省」のついでに、リモートでも実家を片付ける方法と、親子間でモメないコツを教えてもらった。

意見を押し付けない。気分を聞く

「お母さん、こないだ片付けたいって言ってたやん」「キッチンの引き出し、物が詰まってなかなか開けられへんのやわ」

家の片付けを指南し、整理や収納のプロ育成を支援する一般社団法人「片付けのプロ育成協会」(大阪市東住吉区)が今年6月に公開した動画「【実家の片付け】オンライン帰省のついでに母の片付けをサポート!揉めない声かけのコツ3つ」は、関西弁の軽妙なやり取りから始まる。ビデオ通話を活用し、実家と離れていながらも片付けに挑戦する母親と娘を再現、リモート帰省を利用した片付けに役立ててもらおうという趣旨で作られた。動画共有サイト「YouTube」で閲覧できる。

記者の実家の片付けの指導をする「片付けのプロ育成協会」代表理事、井上知恵子さん=大阪市東住吉区(南雲都撮影)
記者の実家の片付けの指導をする「片付けのプロ育成協会」代表理事、井上知恵子さん=大阪市東住吉区(南雲都撮影)

代表理事で整理収納アドバイザーの井上知恵子さん(47)は「私も父が持病を抱えて帰省できず、会えない不安が募る。また、親世代も自宅で過ごす時間が増え、快適に過ごせるように片付けをしたい人は増えている」という。

最初から「片付けよう」と提案するのではなく、親の気分を聞くのがポイントだ。相手の生活空間に踏み込むことは、片付けのプロでも難しい。遠慮のない家族間では、親を思い通りに動かそうとしたり、意見を押し付けようとしたりする。すると「『あんたに言われたくない』など反発されやすい」といい、「直接会えないオンラインだけに、誤解が生じないように、より親の意見を尊重し、けんか腰にならないコツを伝えたかった」。井上さんら同協会のメンバーに自宅に来てもらい、一軒丸ごとの片付けを指南してもらうと、平均30時間で1人あたり約15万円は必要になる。そのノウハウは価値がある。

否定的な意見は言わない

実は私も昨年の正月以来、帰省していない。これをいい機会と、井上さんのアドバイスを受けながら、島根県在住の母親(70)とスマートフォンから無料通信アプリ「LINE」のビデオ通話で片付け支援に挑戦してみた。

事前に気を付けてと言われたのは「否定的な言葉は使わない」ということ。こちらが捨てればいいのにと思っても、「最後に使ったのはいつ」などと聞いて、よく使うものと使わないものに分けてもらう。「片付けはキッチンなど、お母さんが要不要の判断ができる小さなスペースから」

井上さんのアドバイスを受けスマホで母親と会話しながら記者の実家の食器棚を片付け=大阪市東住吉区(南雲都撮影)
井上さんのアドバイスを受けスマホで母親と会話しながら記者の実家の食器棚を片付け=大阪市東住吉区(南雲都撮影)

母親には、事前にビデオ通話で電話をかけるとは伝えていたものの、細かい内容は言っていない。ぎこちなく、食器棚はきれいにしているのかなど水を向け、食器棚の片付けに持っていった。

食器棚に向かう母に「お母さん、棚の中のものを一度全部出してください」。おぼつかない私のリードに井上さんが助け舟を出してくれる。母がスマホで映し出すわが家の懐かしい食器棚。1つの棚から収納物を取り出してもらうと、景品でもらったコップや小皿が続々と現れた。

母も「あれ、こんな皿持ってたっけ」と漏らすほど長らく使われていない食器たち。「その中で、捨てたくないものはありますか」と井上さんに聞かれた母は、ペアの湯飲みを持って「これは息子が旅行の土産に買ってきてくれた物です」。「思い出の品は取っておいてください。それ以外はどうですか」とたたみかける井上さんに「この湯飲み以外は使わないですね」。わが家の母は決断が速いタイプで、私があれこれ言う前に棚の1段が空になった。

1割以上がオンライン帰省を予定

アース製薬の調査によると今夏、帰省予定がない人のうち11・9%がオンライン帰省を予定していると回答。実際に帰省する予定があるとしたのは42・8%だった。オンライン帰省は徐々に定着しているようだ。

協会理事の佐々木有美香さん(56)と生熊有紀子さん(46)は「直接会うのが一番いいが、できないケースもある。電話やLINEのメッセージのやりとりだけでは、例えば、親が転倒してけがをしても子供にそれを隠したりする」という。ビデオ通話でも親の動きがぎこちなかったり、あざがあることなどが確認できるため、「家の片付けで動作の様子を見たり、顔を見てコミュニケーションを取ることは親の健康状態の観察にもつながる」と指摘する。

最近は、人生の終わりを意識して準備を進める「終活(しゅうかつ)」や「生前整理」といった言葉も登場し、人生の総括をできるだけ済ませておこうという意識も広がっている。3人は「お盆は、親が亡くなった際の実家の片付けや、どのように遺品を処分してほしいかを確認するいい機会にもなる」という。そろそろわが家も、オンラインでじっくり両親と話そうか。(藤原由梨)