主張

五輪観客問題 選手の声に耳を傾けたい

東京五輪のスタンドに観客の姿を求める選手らの声に耳を傾けたい。

開幕を目前に控えた強化試合では男子サッカーの日本代表が優勝候補スペインと引き分け、男子バスケットボールは強豪フランスに劇的勝利を飾った。いずれも有観客で行われ、サッカーの日本代表主将、吉田麻也は試合後の取材にこう話した。

「アスリートは、当たり前ですけどファンの前でプレーしたい」「忘れないでほしいのは、選手たちもサッカーに限らず命をかけて戦っているからこそ、この場に立てている。なんとかもう一度、真剣に(有観客を)検討していただきたいと思う」

スペイン戦で先制ゴールを挙げた堂安律は翌朝、「(吉田が)伝えてくれたことが、選手たちの意見です」とツイートした。陸上女子100メートル障害の寺田明日香は、吉田の発言に「心に刺さりました。ありがとうございます」とツイッターに投稿した。

原則無観客開催が決まった際に「悲しい」とつぶやいた陸上選手には、「開催できるだけでありがたいと思え」といった中傷が殺到した。吉田の発言は、そうした批判を覚悟してのものだ。

日本サッカー協会の田嶋幸三会長は吉田の発言を受けて「収容人数の10%、競技場の近くの子供たちなどに限定すれば人流は抑制できるのではないか」と述べた。これが現実的選択である。

バスケットボールの強化試合は緊急事態宣言下の沖縄でも有観客で開催された。五輪本番のみ無観客は根拠に乏しい。スーパーコンピューター「富岳」は競技場に観客1万人を入れても適切な感染対策を取れば感染リスクはゼロに近いと分析した。政府の分科会はスタンドでの感染より県境をまたぐ移動や帰途の飲食を心配した。

そうであるなら、開催自治体の小中高校生をスタンドに招待し、教員などの引率に直行直帰を徹底させることで感染は防げるはずである。ぜひ検討してほしい。

日本の観客だけでは外国選手に不公平だとする声もある。これはあまりにスポーツの現場を知らない。日本のファンが対戦相手にも声援を惜しまぬ姿は2002年、19年のサッカー、ラグビーのワールドカップでも驚きとともに世界に称賛された。子供たちの真剣なまなざしは、必ず遠来の選手たちにも力を与えるはずだ。

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