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「教員免許更新制」に効用あり 論説副委員長・沢辺隆雄

東京五輪を前に忙中閑ありというわけではないが、年配者が多い論説委員室ではコロナ禍で酒がなくてもつい昔話に花が咲く。以下ジェンダーフリー(性差否定)派から怒られそうだが、ご勘弁いただきたい。

某先輩が、コロナ前の飲み会で若いころの自分の写真(やせていた)を見せたら、同席した女性が「この人と付き合いたい」と笑顔を見せたという。すかさず毒舌の後輩は「ママの営業トークか、年配者への忖度(そんたく)でしょ」と疑問を呈した。

さて、担当の文教行政では、教員免許更新制を廃止する方向で検討しているという。多忙な教員への営業トークか、忖度なのか。廃止には反対である。制度導入時の「昔」を振り返ってみた。

小中高校などの教員免許の更新制は平成21年度に導入された。教員免許に10年の期限を設け、更新の際に計30時間以上の講習が義務付けられている。

更新制の導入は、指導力不足、不適格教員を教壇に立たせないための議論がきっかけだった。黒板に意味不明なことを書く、子供と話すのが怖いなど耳を疑う事例がある。

しかし、いったん教員に採用されると、満足に授業ができなくても、なかなか教壇から外されない。わいせつ教員さえ退場を求めるのがままならない例からも分かるだろう。

指導力不足の教員に研修を受けさせる制度もあるが、指導力不足と認定されるのは毎年ごくわずかで機能していない問題も指摘されてきた。

更新制は、不適格教員に退場を求める当初のねらいと異なる制度としてスタートしたが、やってみると、意義を評価する声が少なくない。教員になって10年、20年などの節目に更新講習を受けることは、自身の指導を振り返る重要な機会だという。

免許更新制の廃止が検討される理由は、更新講習の内容が、教育委員会などが行う研修と重なり、多忙な教員の働き方改革に逆行するからだという。更新講習が時間の無駄というなら、その講習が面白くなく、中身に問題はないのか。

民間が運営する更新講習には、好評で全国から数百人が集まる例もある。制度を否定する前に、教育委員会などが行う普段の研修を含め見直す機会としてもらいたい。

免許更新制は鏡に映る自身の姿を踏まえ、次の10年へ育つ重要な意義があると重ねて言いたい。