ワクチン接種の普及を背景に経済活動が新型コロナウイルス・パンデミック(世界的大流行)前に戻りつつある米国では、消費者物価上昇率が5%以上に跳ね上がった。対照的にわが国は物価が下がるデフレが加速している。インフレ、デフレのどちらがよいか。
拙論は一貫して、インフレよりもデフレのほうがわれわれの生活を苦しくさせると論じてきた。デフレの怖さとは物価の下落幅以上に国民一般の所得水準が下がることで、国家の衰亡を招くと増税支持派の説得を試みた。このことは実質賃金の下落トレンドで証明され、小学生でも分かる真実である。しかし、デフレに鈍い空気はメディアを含む国内各界を覆っている。
政府と日銀は物価安定目標のインフレ率2%を堅持しているし、菅義偉(すが・よしひで)政権も「脱デフレ」を掲げたアベノミクスを踏襲しているとの反論を受けそうだが、ならば問う。錚々(そうそう)たる政官エリートは口先だけで、デフレ温存政策を繰り返しているのではないか、と。