中国に生まれ、祖国での民主化運動弾圧に絶望して日本に帰化した著者が、中国共産党政権を知りつくす鋭い批判者となって、同党の結党百周年にあわせて刊行したのが本書です。
これまでわが国で主流とされた中国近現代史のほとんどは、共産党が人民を解放し、人民のための新中国を建設したとする「革命史観」に沿って書かれてきたと著者は指摘します。
そこで、中国共産党政権に忖度(そんたく)する過去の歴史書が意図的に言及を避け、隠してきた「中国共産党にとり都合の悪い史実」を、丹念に拾い集めてテーマ別に読みやすく再構成しようと決意しました。
昨年の春から一年をかけて徹底的に調べあげ、日本ではあまり知られていない自国民への大量殺戮(さつりく)、党内の内ゲバや敵対勢力への浸透工作、苛烈な少数民族政策や周恩来の知られざる経歴など、数々の衝撃事実をありのまま記すことにしました。
いまなお中国に甘い幻想を持つ財界人や政治家が多いのは、日本の知識人が書いた中国近現代史の書物が「革命史観」の影響下にあるからだと著者は批判します。その風潮に真っ向から異を唱え、自らの手で中国共産党百年史をまとめ上げたのです。
わが身の危険をかえりみず、歴史の真実を取り戻そうとする真剣な姿勢に、6月末の発売前から大きな反響が寄せられ、刊行後たちまち4刷と版を重ねています。強硬姿勢を強める隣国と日本はどう向き合うのか、歴史に学ぶことができる渾身(こんしん)作です。
(飛鳥新社・1540円)
飛鳥新社出版部 工藤博海