記者発

ワクチン接種 自治体奮闘に敬意 政治部・大島悠亮

菅義偉首相(春名中撮影)
菅義偉首相(春名中撮影)

新型コロナウイルスワクチンの接種回数が、14日の時点で約6500万回を超えた。今後、現状よりややペースを落とした「1日120万回接種」を維持すれば、10月末に希望する国民への接種が完了する見通しだ。

菅義偉(すがよしひで)首相が5月に「1日100万回」という目標を掲げた際には、「到底無理だ」という声が大半だった。首相は元来、高めの目標を設定し、官僚らに奮起を促して実現させるのが政治家としてのスタイルだ。ただ、この目標は河野太郎ワクチン担当相ですら打ち手不足への懸念などから「無理だ」と判断。首相に「70万~80万回くらいで」と進言していたほどだった。

首相は希望する65歳以上の高齢者への接種を7月末に完了するという目標も掲げたが、同じく難しいとみられていた。しかし現状では1日140万回程度のペースで接種が進み、14日時点で高齢者(約3600万人)の1回目の接種率は約79%に上る。目標の7月末には7割超が2回接種を終える見通しだ。

このスピードアップの要因の一つは「一日でも早く希望する住民への接種を進め、日常を取り戻したい」と取り組む全国の自治体関係者がいるからだ。各自治体の職員らは会場の準備や接種券の配送といった作業を休日返上で進め、接種の受付時間を延ばすなどして対応した。そのスピードは政府の想定を超え、河野氏も「変異株を前に、相当多くの国民が、当初のいろいろな推計より前倒しで接種ができている」とたたえる。自治体の底力を見た思いだ。

だが、逆に接種のスピードが加速しすぎたため、国からのワクチン供給が自治体の希望量に追い付かず、一部の自治体で予約をキャンセルするなどの混乱も発生し、現在も影響は続いている。そのため政府の対応に向けられた批判は根強く、接種回数が伸びても内閣支持率の回復にはつながっていない。

河野氏は接種対象の国民が2回接種するのに十分な量のワクチンを9月末までには確保しており、「1日120万回」のペースならば輸入と自治体への供給のバランスを保てるとしている。ワクチンの普及でコロナ禍の収束はぐっと近づく。そのために日々奮闘する自治体関係者に、心から敬意を表したい。

【プロフィル】大島悠亮

平成16年入社。広島総局、大津支局、東京本社社会部、千葉総局を経て29年5月から政治部。現在は首相官邸を担当。

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