家族がいてもいなくても

(696)ささやかな達成感

イラスト・ヨツモトユキ
イラスト・ヨツモトユキ

梅雨の間、「原っぱ」のクローバーが、とんでもない速さで伸びていく。

クローバーを敷き詰めた美しい原っぱにするには、「伸びたら刈る、伸びたら刈る」を根気よく繰り返すことが、一番大事だといわれている。

このしぶといコロナ禍の中で、「原っぱ」でのビアガーデンも、人形劇公演も、人の集まることは今は禁止中。

ならば、この状況をチャンスと考え、今夏は焦らず、「原っぱ」の整備で、懐かしい日常が戻ってくる日々を待つことにした。

それで草刈りに励んでおこうと、草刈り機の刃をクローバーにやさしいナイロンコードカッターに替えてもらった。

ところが、今までの金属カッターのようにうまく刈れない。

草を刈っていると、ナイロンコードが摩耗して短くなり、新しいコードが自動的に繰り出されてくるはずなのに、それがない。

トリセツ(取扱説明書)には、草刈り機を低回転させながらケース部分で地面を軽くたたくように、と書かれてある。

日頃より敬愛するスタッフのモガキさんに見てもらったら、「たたくのよ、たたくのよ」と言いつつ、軽くどころか激しく地面をたたく。

「要するに遠心力で出てくるんだからさ、分かる?」

そうか、たたき方が足りなかったんだ、と思っていたら、今度はいったん出たコードがなぜか引っ込んでしまった。

今度は求心力が働きすぎたってこと? と何が何だかわけが分からない。

いたしかたなく、コードケースをあけてみると、ケースにはバネがあって、ふたがパクパクするようになっていた。

そのパクパクの弾力が重要らしいことが分かったが、あれこれやった末、結局は自動ではなく手動でコードを引っ張り出して使用可となった。

どうもスイッチを押すだけで使えるものばかりに囲まれて暮らしているうちに、いろんな機器を使いこなしていく能力が劣化した気がする。

などと知人に言ったら、そうじゃなくて、ただ年を取った、そういうことじゃないの、と言われてしまった。

が、何ごとも悪戦苦闘の末の「できた!」ほど、すがすがしいものはない、と私は思う。

そんなわけで、梅雨の合間、コロナの合間、仕事の合間を縫って、あれこれの小さなことに浮き沈みする日々が続いている。

(ノンフィクション作家 久田恵)