菅義偉(すが・よしひで)首相は16日夜、オンライン形式で行われたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の非公式首脳会議で、新型コロナウイルス禍の中で開催する東京五輪・パラリンピックについて、万全な感染対策を講じ、安全・安心な大会を実現するとの決意を表明した。同時に、コロナで落ち込んだ世界経済の回復に向け、自由で公正な経済圏の拡大や途上国を含むワクチンの公平なアクセスも訴えた。
日本政府によると、首相は東京五輪に関し、「世界が新型コロナに直面する今だからこそ、団結し、人類の努力と英知によって難局を乗り越えていけることを世界に向けて発信していきたい」と訴えた。首相の発言に対し、複数の首脳から東京五輪への支持や期待の言葉が寄せられたという。
政府は各国首脳が参加する今回の会議を「開幕まで1週間となった東京五輪の重要な発信の機会」と位置付けていた。
一方、首相は「ルールに基づく自由で開かれた秩序」の重要性を呼びかけたうえで、日本が提唱する法の支配などの「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた取り組みを推進する考えを表明した。覇権主義を強める中国が念頭にある。
また、コロナの世界的な感染を抑え、経済を回復させるには先進国だけでなく、途上国でもワクチン接種が進むことが欠かせない。ただ、中国やロシアは自国製ワクチン通じて影響力拡大を図っている。
首相は会議で、日本として6月にワクチンサミットを主催し、途上国などにワクチンを分配するための資金確保に取り組んだことや、国際的枠組み「コバックス」への日本製ワクチンの供与を進めていることなどを説明した。