池袋暴走事故公判結審詳報

(4)拓也さん母「実刑を望みます」

警察関係者に付き添われ目白警察署を出る旧通産省工業技術院元院長の飯塚幸三被告=2019年5月18日午後、東京都豊島区(三尾郁恵撮影)
警察関係者に付き添われ目白警察署を出る旧通産省工業技術院元院長の飯塚幸三被告=2019年5月18日午後、東京都豊島区(三尾郁恵撮影)

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《東京・池袋で平成31年4月、乗用車が暴走して通行人を次々とはね、松永真菜(まな)さん=当時(31)=と長女、莉子(りこ)ちゃん=同(3)=が死亡した事故で自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪に問われた旧通産省工業技術院の元院長、飯塚幸三被告(90)の公判は、真菜さんの夫、拓也さんの母親の意見陳述に移った。真菜さんにとっては義母に当たる》

《母親は、時折声を詰まらせながら、真菜さんと莉子ちゃんと過ごした日々について語った。事故当日、テレビをつけると事故の映像が飛び込んできたという。息子の拓也さんからの連絡を受けて、2人が事故に巻き込まれたことを知った》

母親「夢と現実の区別が分からなくなって、震えながら病院に行きました。医師からは『即死でした』といわれ、本当に地獄に突き落とされた思いがしました。(亡くなった)冷たい2人の手を握ることしかできなかった」

《話は裁判に移っていく》

母親「事故から1年半で、やっと裁判が始まった。(飯塚被告は)公判で罪を認めると思っていたが、『大変申し訳ない』と言ったが、訳の分からないことを言っていて、怒りがこみ上げました」

母親「何よりも、これだけの時間を(裁判で)割いても、真菜さんと莉子(りこ)ちゃんが、どこか遠くに置かれているような感じがしました。どれだけ多くの人に悲しみと苦しみを与えたかを(飯塚被告は)考えてほしい。被告人には実刑を望みます」

《続いて、拓也さんの父親の意見陳述が行われた。事故の日、病院に向かう中、「無事であってほしい」と願い続けたが、病院に到着し、医師から2人が亡くなっていたことを知らされた》

父親「妻と声を上げて泣きました。本当にしばらく呆然(ぼうぜん)と、涙を拭うこともできなかった」

《真菜さんについて「やさしく、明るい笑顔」が印象に残っていると語り、莉子ちゃんについては「(拓也さんと真菜さんの)2人の愛に包まれた優しい子だった」と語った父親。飯塚被告に対しては、「最も重い刑を望みます」と述べた》

《意見陳述はいよいよ、夫の拓也さんに移った。「(飯塚被告に)法律で与えられる限りで最大の刑罰をお願いしたい」。こう話した拓也さんは、改めて真菜さんと莉子ちゃんとの思い出を語った》

《2人が出会ったのは拓也さんが27歳、真菜さんが26歳の時だった。拓也さんの一目ぼれで、真菜さんについては「寡黙な性格だが、ずっと笑顔だった」。月に2~3回は沖縄に行くなど交流を深めたといい「楽しい日々で、色あせない大切な思い出です」と話した》

拓也さん「3度目に交際を申し込んだとき、(真菜さんが)『今日は11月4日で〝いいよ〟の日だよ』と言ってくれた…」

《ここまで話すと、拓也さんはこらえきれなくなったように、言葉を切った。飯塚被告は、ややうつむき加減で、拓也さんの言葉を聞いている》

《真菜さんと結ばれ、幸せな日々を送る中、莉子ちゃんを授かった》

拓也さん「神秘的で、わが子というのはなんて愛しいのかと思った。自分が父親になった実感がわかなかったが、絶対に幸せにすると心に誓った」

《真菜さんは、莉子ちゃんの成長の記録を育児日記として残していた。拓也さんは「莉子が生まれてから1000日以上の記録で、私の宝物です」と振り返った》

=(5)拓也さん「被告には心を踏みにじられた」に続く

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