鑑賞眼

新国立劇場オペラ「カルメン」  現代に置き換え新演出  

オペラ「カルメン」の斬新な演出。カルメンはコンサート会場に〝歌手〟として登場(新国立劇場提供、寺司正彦撮影)
オペラ「カルメン」の斬新な演出。カルメンはコンサート会場に〝歌手〟として登場(新国立劇場提供、寺司正彦撮影)

スペインのアレックス・オリエの新演出によるオペラ「カルメン」が新国立劇場で上演され、現代に置き換えたストーリーが好評だ。オリエは以前、新国と東京文化会館の共同制作「トゥーランドット」(令和元年)も手掛け、斬新過ぎる演出で賛否両論を巻き起こしたが、今回はおおむね抵抗感なく受け入れられているようだ。

新演出では、カルメンがロック歌手、ドン・ホセが私服の警察官という奇想天外な設定で、幕が開くとロックコンサート会場のような鉄パイプ構造のステージが登場し、度肝を抜かれた。

カルメンの周りにはミュージシャンや音響技術者、プロデューサー、追っかけファンがおり、密輸団が扱うのは麻薬(ドラッグ)。19世紀初頭のストーリーが、現代に置き換えられた。

大野和士の指揮で流れる前奏曲は、歯切れの良い速いテンポで高揚感が否が応でも高まる。カルメンは「ハバネラ」を、コンサート会場でスポットライトを浴びながら熱唱した。

舞台に立っているのがオペラ歌手ではなく、ロック歌手に見えてしまうのは、カルメンを演じるステファニー・ドゥストラックの表現力のある歌声のなせる業か。ハイヒールに短い丈のタイトなスカートも着こなし、スタイル抜群で舞台映えしていた。

アレックス・オリエによる新演出オペラ「カルメン」(新国立劇場提供、寺司正彦撮影)
アレックス・オリエによる新演出オペラ「カルメン」(新国立劇場提供、寺司正彦撮影)

オリエは新演出に当たり、グラミー賞など数々の賞を受賞しながら薬物・アルコール依存症の問題を抱え、27歳で亡くなった英国の歌手、エイミー・ワインハウスのイメージをカルメンに重ねた。ドゥストラックの二の腕にタトゥーが施されるなど、ビジュアル的にもワインハウスを参考にしたという。

またオリエはドン・ホセを独占欲が強く、嫉妬深く、拒絶されることを受け入れられない男と解釈。嫌な男なのだが、村上敏明が演じるドン・ホセはカルメンにたぶらかされ、破滅してしまった男という従来のイメージに近いかもしれない。