保護されたウミガメが1カ月以上プラごみ排出 海遊館 - 産経ニュース

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保護されたウミガメが1カ月以上プラごみ排出 海遊館

海遊館に運ばれたアオウミガメが十数回にわたって排泄したプラスチックごみ
海遊館に運ばれたアオウミガメが十数回にわたって排泄したプラスチックごみ

昨年11月に高知県土佐清水市沖の定置網に迷い込み、保護されたアオウミガメが、移送先の海遊館(大阪市港区)で、1カ月以上にわたってレジ袋や食品の包装容器などプラスチックごみを排泄(はいせつ)し続けた。当初1カ月間は餌を食べることもできなかったといい、プラごみによる海洋汚染の深刻さが改めて浮き彫りになった。専門家は「海洋プラごみが海の生き物の健康を脅かしている」と警鐘を鳴らしており、同館では今後、排泄されたプラごみの展示も検討している。

1カ月餌を食べず

高知県土佐清水市にある海遊館の研究所「以布利センター」に保護されたアオウミガメが大阪に移されてきたのは昨年11月30日。背甲の長さ44センチの子供の個体で、外傷などはなく、泳ぎにも変わったところはみられなかったが、到着後2週間たっても、全く餌を食べない状態が続いていた。

当初は人影を見ると逃げることがあり、環境になじめないのかと思われていたが、異変が見つかったのは12月19日。水槽の底でレジ袋や食品の包装容器、農業用シートの破片などプラごみが見つかった。消化管に詰まっていたものが排泄されたようだった。それから年明けまでプラごみの排泄が続き、1カ月間、一度も餌を食べなかったという。

棒の先に餌をつけて給餌する飼育員=大阪市港区
棒の先に餌をつけて給餌する飼育員=大阪市港区

その後、餌を少しずつ食べ始めたものの、心配した同館魚類担当飼育員の喜屋武樹(きやたけいつき)さん(28)が獣医師に相談。今年1月上旬にレントゲン撮影すると、腸の中に影が写っていた。腸の動きを活発化させる注射を打つなど処置を進めながら経過を観察。徐々に影が小さくなっていくのを確認した。今年5月には異物が確認されなくなったという。

「消化管内に異物があったのでフジツボの殻や海藻などが排泄できず、しんどかったと思います。今は安定して餌を食べるようになりました。大事に至らなくてよかった」と、喜屋武さんは胸をなで下ろす。

海藻と間違えて

ウミガメは海藻やクラゲを餌にする。そのため海中に浮かぶポリ袋などのごみをちぎれた海藻やクラゲと間違えて食べる傾向があるという。

誤食したプラごみは消化されずに消化器官の中にたまり、臓器を傷つけたり、餌を食べることができず痩せ衰えたり、ウミガメの健康に重大な被害をもたらす可能性もある。

ウミガメの生態に詳しい四国水族館の松沢慶将館長は「アオウミガメは海藻を主食にすることから沿岸部に生息するため、特に人間の活動の影響を受けやすい」と指摘する。

また、ウミガメが海洋プラごみの被害を受けていることは世界的な課題となっており、太平洋、大西洋、地中海の3海域で死んだ状態で発見された102件のウミガメのうち、すべての内臓から廃プラスチックが検出されたという英大学の調査もある。

直接の死因としては漁網にひっかかってケガしたものが多いというが、松沢館長は「プラごみによる健康被害は深刻化している。保護されたウミガメがプラごみを排泄する例はほかにもあるが、人気水族館の海遊館でのウミガメの回復の様子などが広く知られることで、プラごみ削減への動機付けのきっかけになるのでは」と話す。

現在、海遊館のウミガメはバックヤードで経過観察中だが、体調は順調に回復している。同館では「ウミガメのほかにもクジラや海鳥でもプラスチックごみの誤飲問題が取り沙汰されています。将来的には今回排泄されたプラスチックごみを展示して、環境について考えるきっかけにしていきたい」と話している。(上岡由美)


誤食や魚網絡まり多く

海を漂うプラスチックの問題は深刻化している。自然に分解されないプラスチックごみは年間800万トン以上が海に流れ込んでいるとされる。また、海洋プラごみは2050年に魚の総重量を上回るという予測もある。

世界自然保護基金(WWF)によると、海洋ごみの影響でウミガメや魚類、海鳥、アザラシなどの海洋哺乳動物約700種の生物が傷つけられたり死んだりしているといい、このうち9割以上がプラスチックの漁網などに絡まったり、ポリ袋を餌と間違えて摂取したりすることによる被害だという。

こういった現状を受けて、各国も対策を急ぐ。欧州連合(EU)では今月3日、プラスチック製や発泡スチロール製の使い捨て食器や食品容器の市場流通を禁止することなどを盛り込んだ新規則が施行された。日本政府も「30年までに使い捨てプラスチックを25%削減、容器包装プラスチックの6割をリユース・リサイクル」という目標を立てている。