幅広い救済、国に迫る 黒い雨訴訟

14日の広島高裁判決は1審に続き、原爆投下に起因するという被害の特殊性を踏まえ、国の責任による救済を掲げた被爆者援護法の理念を重視した。被爆からまもなく76年。高齢化に伴い健康不安を抱える人が増す中で、「線引き」や「科学的知見」にこだわってきた国の援護行政を早期に見直し、幅広く救済する必要性をより強く国側に迫った司法判断といえる。

昭和20年8月6日の原爆投下直後に降った黒い雨。その範囲や健康への影響については、未解明の部分も多い。終戦後の混乱による調査不足に加え、差別などを恐れて口をつぐむ住民も少なくなかったからだ。

国は援護対象区域外でも黒い雨を浴びたとする原告側の訴えに対し、2審でも「科学的知見による根拠」や「客観的な証拠」がないと反論してきた。しかし高裁判決は1審に続き、重い口を開いた住民らの証言や聞き取り調査の内容を重視。区域外でも黒い雨が降った可能性を認め、原告側に高レベルの科学的立証を求める国側の姿勢は、法の理念に沿っていないと戒めた。

1審判決は、原告らが原爆による影響を否定できないがんなどの病気を発症した点を踏まえ、被爆者に該当する要件としてこれら病気の発症を挙げたが、高裁判決はこの1審の判断を「失当」と指摘。病気の発症と関係なく被爆者と認定すべきだとし、結果的に幅広い救済への道を切り開く形となった。今回の控訴審判決は、地裁判決から1年弱と比較的短期間で出されており、早期解決を願う裁判所側の意思の表れともいえそうだ。

原告側弁護団の竹森雅泰弁護士は、判決後の記者会見で、「援護行政は国によるお恵みではなく、責任であり義務だ」と強調。被告側が今後、被爆者援護法の理念とどう向き合うのかが注目される。(杉侑里香)

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