架空の3言語 不思議な世界 芥川賞の李琴峰さん

「彼岸花が咲く島」(文学界三月号)で第165回芥川賞に選出された李琴峰さんは、笑顔で会見に応じる=東京都千代田区(日本文学振興会提供)
「彼岸花が咲く島」(文学界三月号)で第165回芥川賞に選出された李琴峰さんは、笑顔で会見に応じる=東京都千代田区(日本文学振興会提供)

今回で2度目のノミネートとなる台湾出身の李琴峰(り・ことみ)さん(31)が、多くの歴史的作家を輩出してきた芥川賞を射止めた。受賞会見で今の気持ちを聞かれると、「一番感謝しないといけないのは、これまで李琴峰作品を読んで応援してくれた読者の皆さん」と謝意を述べた。

日本語以外を母国語とする作家が獲得したのは、平成20年の楊逸(ヤンイー)さん以来で2人目となる。尊敬する楊逸さんに続く受賞を「本当に光栄に思う」と喜ぶ。

受賞作の「彼岸花の咲く島」では、<ニホン語>と<女語>、<ひのもとことば>という架空の3つの言語が使われる。さまざまな言語に接してきたからこそ表現できる不思議な世界が展開される。

日本語を学び始めたのは中学2年のころ。25年に日本に留学して就職。その後、小説を書き始め、29年に群像新人文学賞優秀作となった「独舞」(単行本は「独り舞」に改題)でデビュー。セクシュアル・マイノリティー(性的少数者)をテーマに、小説を書き続けてきた。

生まれつき習得したわけではない日本語で作品を発表し続けている。その理由を「日本に住んでいて、日本語で日々の生活をしている。だから、日本語で書くのはある種、大変だけれど自然なことになっている」と語る。

過去の作品では、多様な性的アイデンティティーを持つ女性が登場したり、ウイグルの問題を取り上げたりしてきた。「作品一作ごとに、日本文学というものを確実的にアップデートしているという自負がある」と話す。

歴史的な受賞者となるだけに、今後の活躍に大きな期待がかけられている。記者会見では、日本文学史でどんな役割を担っていくつもりなのかという質問に対し、「それを理解して整理し、分類するのは評論家、研究者の仕事と思う」と話し、こう言い切った。「自分が大事だと思っている問題意識を小説の中に取り込んで、そして自分が書きたいものを書いていく。それに尽きるかなと思う」(森本昌彦)

芥川賞は石沢、李両氏 直木賞は佐藤、澤田両氏