EU国境炭素税、2026年から全面実施 - 産経ニュース

メインコンテンツ

EU国境炭素税、2026年から全面実施

記者会見で温室効果ガスの削減策などを発表したフォンデアライエン欧州委員長=14日、ブリュッセル(AP=共同)
記者会見で温室効果ガスの削減策などを発表したフォンデアライエン欧州委員長=14日、ブリュッセル(AP=共同)

【パリ=三井美奈】欧州連合(EU)欧州委員会は14日、地球温暖化対策の計画案を示した中で、環境規制の緩い国からの輸入品に課税する「国境炭素税」の導入を発表した。温室効果ガス排出量の多い鉄鋼、セメント、肥料、アルミニウム、電力の5品目を課税対象とした。域内の輸入業者へ2023年から報告を義務づけ、26年から徴税も含め全面実施する。

EUは昨年、排出量を2030年までに1990年比で55%削減する目標を掲げており、計画案は実現に向けた具体策となる。炭素税導入には、EU企業が温暖化対策のコストを一方的に負担し、規制の緩い域外国企業との不公正な競争にさらされることを阻止する狙いがある。

国境炭素税の対象となる5品目について、輸出国側で炭素規制の網から漏れていることが疑われるとした。輸入業者には商品の製造国、量などを記した「デジタル証明書」の提示を義務付け、排出量に応じて課税金額を決める。これら品目の対EU輸出が多いロシアや中国、韓国が影響を受けるとみられている。

国境炭素税により、EUには年間100億ユーロ(約1兆3千億円)の新たな税収が見込まれている。EUは新型コロナウイルスの流行で打撃を受けた経済の復興基金として、7500億ユーロの共同債券を発行する計画で、国境炭素税を財源にあてる。

フォンデアライエン欧州委員長は14日の計画案発表で、「(石炭など)化石燃料を使った経済はすでに限界に来た」とコメントし、温室効果ガス削減を成長戦略に位置づけていく姿勢を表明。明確な削減計画を示した意義を強調した。

計画案は、排出量取引制度(ETS)で航空産業などに割り当ててきた無償排出枠の廃止も示した。

欧州連合(EU)が14日に示した、環境規制の緩い国からの輸入品に課税する「国境炭素税」は、課税対象が温室効果ガス排出量の多い鉄鋼やセメントなど5品目となり、日本企業への影響は限定的だ。足元のEUの輸入に占める日本の鉄のシェアは1%、また、アルミニウムやセメント、肥料に至っては0%(いずれも2020年暫定値)とわずかなためだ。

ただ、対EUの輸出入の影響だけで判断するのは拙速との見方もある。例えば、EUはロシアから鉄を23%、肥料を28%輸入している。仮にEUが設定する国境炭素税の適用にロシアが反発して輸出を停止し輸出先を日本の輸出相手国に切り替えた場合、競合して影響が出る可能性もある。

みずほリサーチ&テクノロジーズ調査部の菅原淳一主席研究員は、「当初は課税品目が限られるが、自動車など日本にとって重要品目などが加わる可能性もある」と述べ、制度の内容を見極める必要があると指摘する。

日本は、対話を通じて主要排出国や新興国が能力に応じた排出削減に取り組むよう国際社会に促すとの考えを「グリーン成長戦略」にも盛り込んでいる。また、日本も国境炭素税導入の議論を進めている。EUが制度の本格運用を始めるにあたり日本にとって不利に働かないよう、引き続きEUや関係各国・地域への働きかけが求められる。(那須慎一)