一筆多論

「内政干渉に反対」の面々 内畠嗣雅

「内政干渉に反対する」というのは、中国やロシアなど強権国家が、米国など民主主義諸国に対抗し、結託する際の常套(じょうとう)句である。

6月末の中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領とのオンライン会談でも、両首脳が「民主主義や人権を掲げて他国の内政に干渉することや、一方的な制裁を行うことに反対する」と強調したという。

6月中旬の先進7カ国首脳会議(G7サミット)は、首脳宣言で中露両国に数多くの注文を付けた。

中国に対しては、新疆ウイグル自治区や香港情勢をめぐって人権や基本的自由を尊重するよう求めた。

ロシアについては、他国の民主制度への干渉やサイバー攻撃、反体制派弾圧などを問題視し、反体制派指導者、ナワリヌイ氏毒殺未遂事件を念頭に国内での化学兵器使用に関して説明を求めた。

中国は新疆ウイグル自治区での人権侵害を理由に、米国や欧州連合(EU)から制裁を科され、ロシアはクリミア半島の一方的併合をはじめ、ナワリヌイ氏の事件、米大統領選への干渉などでやはり、米欧から制裁を受けている。習氏は共産党創建100年の演説で、「偉そうな態度の説教は絶対に受け入れない」と述べた。居丈高な物言いに大国の自負と独裁者の怒りがうかがえるが、プーチン氏も同じ思いに違いない。

「内政干渉に反対」の連呼は第一に、中露両国に隠蔽(いんぺい)しなければならない事実があるからだ。ジェノサイド(民族大量虐殺)の実態が白日の下にさらされるなどすれば体制はもたない。

もう一つ、世界の強権国家やその支配者に向け、中露陣営にくみするよう呼びかけるメッセージであることも忘れてはならない。世界中の悪の力を結集するための号令である。

G7首脳宣言は、イランの核開発、人権侵害に懸念を表明し、ミャンマーのクーデターと治安部隊による暴力を非難し、北朝鮮には核兵器をはじめとする大量破壊兵器と弾道ミサイルの放棄、拉致問題の即時解決を要求した。「内政干渉に反対」はこうした批判への共通の回答になる。

5月、ベラルーシのルカシェンコ政権が旅客機を強制着陸させて反体制派活動家の身柄を拘束し、米欧が非難の声を上げると、ロシアはすかさず、「ベラルーシの内政問題」とかばった。中露が他国の支配者と一緒に「内政干渉に反対」というとき、何に対する干渉かは問わない。ただただ、文句をつけるなというのである。そこには、よりどころとなる共通の理念はない。強権支配を押し通すためのご都合主義だ。

問題は、米欧の主要国や日本などが掲げる「民主主義」と中露の「内政干渉に反対」のどちらが、世界の国々の指導者にアピールするかである。6月22日、国連人権理事会で米欧や日本など44カ国が、新疆ウイグル自治区の人権状況について「深い懸念」を示す共同声明を発表したが、これに対し、60以上の国が中国の立場を支持した。残念だがこれが現実だ。中国は国連などで多数派を得るため、「説教抜き」で途上国に経済的支援を与えている。

中国やロシアに対しては、自由や人権の侵害を徹底的に追及しなければならない。隠蔽したい事実に迫ることが、中露を追いつめる。「内政干渉に反対」を裏返せばそういうことだ。(論説委員)