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麻生氏のまっとうな「台湾発言」 論説副委員長・榊原智

麻生太郎副総理兼財務相(春名中撮影)
麻生太郎副総理兼財務相(春名中撮影)

麻生太郎副総理兼財務相が5日の講演で、中国が台湾に武力侵攻するケースを念頭に「間違いなく(安全保障関連法上の)存立危機事態に関係してくると言っても全くおかしくない。日米で台湾を防衛しなければならない」と語った。集団的自衛権の行使で台湾を防衛するとのメッセージを内外に発信したことになる。

麻生発言について加藤勝信官房長官は記者会見で「仮定の問題」だとして答えを避けた。岸信夫防衛相はどのような状況が存立危機事態に当たるかは「個別具体的な状況から総合的に判断する」と説明した。加藤、岸両氏が麻生発言を否定しなかった点は重要だ。麻生氏は副総理で国家安全保障会議(NSC)の中核をなす4大臣会合の一員である。

中国外務省報道官は「断固反対」を表明したが、中国政府と人民解放軍は台湾侵攻を企てる際に米台への日本の加勢を今まで以上に想定するしかない。侵攻のハードルを上げた麻生発言は平和に寄与する。

台湾防衛とは自衛隊が戦うだけではない。朝鮮半島有事と同様に、米軍が台湾防衛に動くには日本の協力が不可欠だ。米軍基地の使用はもちろん、燃料弾薬などの補給や航空機、艦船の補修、医療の提供といった兵(へい)站(たん)(ロジスティクス)の確保は日本抜きでは間に合わない。「存立危機事態」や「重要影響事態」の認定と行動が欠かせない。

日本の安全保障上の弱点は政界や政府内の媚中(びちゅう)派の存在だ。

平成9年のことだが、加藤紘一自民党幹事長は対米協力を行う「周辺事態」(今の重要影響事態)について「中国(関連の有事)は念頭にない」と述べた。一方、菅義偉首相が師と仰いだ梶山静六官房長官(当時)は、台湾海峡での中台紛争を含むとの考えを示した。これに対し、民主党の菅直人代表(当時)は歴史的理由から「軍事的なコミットは行うべきではない」と反対した。

加藤(紘)、菅(かん)両氏は自由と民主主義の台湾を見捨て、日米同盟が崩壊しても構わないと表明したに等しい。日本的リベラル派はしばしば、中国の覇権主義に与(くみ)する言動をとる。

今回の麻生発言への反発が国内でほとんど見られないのは悪い話ではない。麻生氏は言葉で平和のために戦っている。その上で菅首相や麻生氏に求めたいのは、防衛費の思い切った増額とロジスティクス能力向上を主導することである。