緊急事態宣言

酒販業界「世間知らずだ」、政府に反発 規制強化が悪循環の恐れ

新型コロナウイルス特別措置法に基づき東京都に4回目の緊急事態宣言が12日発令されたが、規制が強化された飲食店や酒類販売業界などの反発が強まっている。今回から政府が酒の卸売業者に、酒類提供を続ける飲食店との取引を自粛するよう要請したためだ。ただ、飲食業界だけが〝狙い撃ち〟される不信感や反発から、酒類を提供する店は増えているとの指摘もあり、規制強化が悪循環に陥っている恐れもある。

「信頼関係で成り立っているのに(店から酒を)頼まれて断るなんてできない。考えた人間はよっぽど世間知らずだ」。東京都新宿区の業務用酒販店「佐々木酒店」の佐々木実社長(66)はそう憤る。

内閣官房と国税庁は8日、問題店舗との取引を止めるよう、卸売業者に文書で要請した。佐々木氏によると、飲食店は納品に訪れる卸売業者に店の鍵を預けるほど、普段から強い信頼関係がある。いくら政府の要請でも、強制力のない今回の措置に「従う業者はいないだろうね」と話す。

全国小売酒販組合中央会も9日に政府宛の抗議文を発表。取引停止に対する補償がなく、注文を断れば顧客を失う恐れがあるからだ。水口尚人事務局長も「無理筋の依頼に応じてほしいとはいえない」と、会員に対して特段の働きかけはしない方針だ。

業界の慣習を無視した政府の対応を疑問視する声は金融業界からも出ている。西村康稔経済再生担当相は8日に問題店舗の情報を取引金融機関に流し、順守を働き掛けてもらう方針を表明したが批判が噴出、翌日に撤回した。ある銀行関係者は「飲食店目線があまりにも弱い」とあきれる。

一方で政府の意向に反し、営業する飲食店は増えているとみられる。飲食店の法律問題に詳しい石﨑冬貴弁護士は「肌感覚だが中小店の半数くらいは営業を続けている印象だ」と語る。過料を払ってでも営業した方が有利なことも多く、隣の店がやっているからと営業再開に踏み切るケースが目立つという。石﨑氏は「罰則を強化して補償を充実させるなど、正直者が損をしない仕組みづくりが必要だ」と話している。