“完全に新しいOS”として発表された「Windows 11」と、見えてきたマイクロソフトの思惑

マイクロソフトが次期OS「Windows 11」を発表した。その進化のポイントは主にビジュアルに関するものが中心で、必ずしもOSとしては根本的なものではない。その開発の背景をひも解くと、このOSを完全に「新しいOS」としてリリースすることになったマイクロソフトの事情が透けて見えてくる。

TEXT BY CHRIS STOKEL-WALKER

WIRED(UK)

情報のリークとそれに対抗する法的措置、そして派手なローンチイベント──。このほど発表された「Windows 11」は、「Windows 10」にとてもよく似ている。そして「Windows 8.1」にも「Windows 8」にも、よく似ている。

マイクロソフトのOSにおいて好まれていた(そして嫌われていた)要素は、この新しいOSでもすべて残っている。だが、ありがたいことに、音声アシスタント「Cortana」は静かな最期を迎えるためにひっそりと姿を消した。「スタート」ボタンは画面の中央下部に移動し、そして起動音と壁紙が新しくなっている。

その程度の断片的な変更しかないというのに、なぜWindowsの完全な新バージョンが必要なのか──。そう疑問に思っているのは、あなただけではない。

なぜOSを新しくするのか

いまはウェズリー・ミラーがマイクロソフトで過ごした7年間とは、まったく異なっている。同社のOSおよびMSN部門のプログラムマネージャーだったミラーと同僚たちは、2000年の後半から01年初頭にかけて「Windows XP」のリリースに向けて準備を進めていた。彼らに与えられた論理的な根拠と説明は明確で、「大学生から年金生活者まで、誰もが問題なくPCを起動して使えるようにする」というものだった。

「消費者の目線に立てたことは、とても有効でした。それまでWindowsは長らくビジネスに焦点を当てたので、ユーザビリティーにはあまりフォーカスしていませんでしたから」

そしていま、Windows 11の開発とリリースの裏にどのような目的があるのかは定かではない。「まだそれが見えてこないのです」と、ミラーは言う。「それがある種の問題だと思います」

Windows 10をインストールしているユーザーなら無償でアップグレードできるWindows 11は、ユーザーインターフェースの表面的なレベルでの変更をひとまとめにしたもののように見える。そうしたことだけでは、完全に新しいOSのローンチを正当化することはできない。

「UIは基本理念ではありません」と、ミラーは言う。「Windows 10では実現できなかったような、消費者にとってよりよく、より速く、より簡単に、よりシンプルなかたちでということを、新しいOSでどのように実現させるのでしょうか? わたしには、それがまだ見えてきません」

OSに求められなくなったビジョン

ひねくれた視点をもった人々は、Windows 11をリリースする目的は金とマーケティングなのだと言う。

「単に人々の認識を変えようとしているだけなのです」と、マイクロソフト関連のニュースを扱う人気ウェブサイト「Windows Report」の創設者のラドゥ・ティアシナは指摘する。「人々の製品に対する認識と、その消費の仕方に影響を与えようとしています。それはプロセスであって、出来事ではありません」

Windows Reportが読者8,000人以上を対象に実施した調査によると、3分の1のユーザーが新たなハードウェアを購入するにあたって、段階的なアップグレードよりも完全に新しいOSを待っていると回答している。

6年前とは確実にアプローチが変わっている。当時、あるマイクロソフトの社員が同社のイベントで、Windows 10が同社にとって“最後のOS”になると公に発言した。「この当時は、時代を超えて通用するとは思えないような、ざっくりとした大げさな発言をするチームメンバーたちもいたのです」と、ミラーは語る。

マイクロソフトは最近、異なるアプローチをとるべくWindowsを監督する新チームを立ち上げた。「Windows 10のときより、ビジョンに集中しようとしているチームの雰囲気を感じます」と、ミラーは言う。

問題は、わたしたちがもはやOSにビジョンを必要としていないということだろう。それは2001年のWindows XP、もしくは09年の「Windows 7」のリリース当時からそうだったと言える。

ミラーは、自身がかかわっていたWindows XPとWindows 7はどちらもに「革新的」であり、OSの仕組みや動作を根本から変えたのだと主張する。「いまやOSは、大半の消費者にとって単なる道具なのです」と、ミラーは言う。「会社側は消費者にわくわくしてもらいたいようですが、もはや消費者がOSにわくわくさせられるようなことはありません」

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