主張

酒類提供の禁止 「鞭」ばかりでは持たない

東京都に対する政府の緊急事態宣言発令などに伴い、飲食店での酒類提供への規制が再び強化されることになった。

緊急事態宣言や蔓延(まんえん)防止等重点措置の対象地域で飲食店の時短営業要請を続けることに加え、宣言地域では酒類を提供する飲食店に休業を要請する。重点措置の地域でも酒類提供の原則停止を求め、一定要件を満たす場合のみ知事の判断で午後7時まで可能とする。

これが8月22日まで続くのである。ぎりぎりの経営を続けてきた飲食店にとっては死活問題だ。特に東京都では、前回の宣言解除から1カ月もたたず酒類が再び全面的に認められなくなった。「鞭(むち)」ばかりでは業界は持たない。

苦境を和らげるには、要請に応じた飲食店への協力金支給を迅速かつ十分に行うほかない。政府は今回、協力金を先渡しする仕組みの導入などを決めた。その円滑な実施が重要なのは当然だが、それだけでは万全とはいえまい。

そもそも、これまでの協力金支給の多くが大幅に遅れている。これは政府や自治体の不手際だ。一刻も早く遅れを解消し、支援を行き渡らせる必要がある。そこが徹底できなければ、規制を強めても限界があると認識すべきだ。

飲食店への協力金のうち一律1日4万円を先渡しできるようにする。併せて、政府の要請に応じない飲食店との取引停止を酒類販売事業者に求める考えである。

背景には要請に応じず深夜まで飲酒を伴う営業を行う店が相次いでいることがある。これでは新型コロナウイルス対策としての実効性が得られないのはもちろん、要請に応じた店だけが苦しむ不公平感も強まるばかりである。

これに関連して西村康稔経済再生担当相は8日の会見で、要請を拒む飲食店の情報を金融機関に流し、順守を働きかけてもらう考えを示した。9日には、不公平感解消が目的であり、「融資を制限するという趣旨ではない」などと語ったが、金融機関に「圧力」を求めたような発言への批判は収まらず、その後に方針を撤回した。

規制効果を高める必要があるとしても、業界内の疑心暗鬼が深まるようでは元も子もない。業界には政府のコロナ対応全般への不満もあり、飲食店ばかりに協力を強いることへの反発もある。これを拭えるかどうかが問われていることを忘れてはならない。

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