ご当地映画、コロナで宣伝に苦労 青森舞台の「いとみち」は東京からエール - 産経ニュース

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ご当地映画、コロナで宣伝に苦労 青森舞台の「いとみち」は東京からエール

「いとみち」を全面的に支援するアオモリンク赤坂の店内。入り口を入ってすぐ、大型ポスター、関連商品が並び、奥の大型モニターでは予告編映像を流し続けている=東京都港区(石井健撮影)
「いとみち」を全面的に支援するアオモリンク赤坂の店内。入り口を入ってすぐ、大型ポスター、関連商品が並び、奥の大型モニターでは予告編映像を流し続けている=東京都港区(石井健撮影)

「ご当地映画」が、ご当地での宣伝に苦労している。新型コロナウイルス禍で俳優らが東京から行くことがはばかられるからだ。青森県で撮った青春映画「いとみち」は、主演女優らによる宣伝イベントなどが地元でできないまま公開の日を迎えた。ただ、この映画には、〝東京のご当地〟から声援が飛んだ。

地方で撮る

特定の地方都市を撮影地に選び、その風土の特色を生かした映画は、例えば大林宣彦(のぶひこ)監督が故郷の広島県尾道市を舞台に「転校生」や「時をかける少女」などの名作を残した。「萌(もえ)の朱雀(すざく)」などの河瀬直美監督も、出身地の奈良を拠点に多くの作品を奈良で撮っている。

映画撮影はその土地への経済波及効果も見込まれる。作家で映画監督の秦建日子(はた・たけひこ)さんは「映画撮影による地方創生」を掲げ、最新作の「ブルーヘブンを君に」は岐阜県で撮った。

一方、映画プロデューサーの松村龍一さん(51)は「風景、人、言葉の魅力に加えて、コストを抑えられる場合もあるし、スタッフは土地のおいしいものを味わえる」と地方で撮影することの作り手側の魅力を語る。

松村さんは大阪市出身だが、平成24年にスタッフとして青森県での映画撮影に参加して以来、その風土、文化に魅了され、ついに自らオール青森ロケの映画「いとみち」を作った。だが、思わぬ苦労が待っていた。コロナだ。

行けない東京人

「いとみち」は、青森市のメイド喫茶でアルバイトを始めた高校1年生のヒロインが、さまざまな境遇の人々と出会って成長する物語。同名の小説の映画化で、東京の新宿武蔵野館など全国の映画館で順次公開が始まっている。

主演は、青森県平川市の出身で、津軽弁も巧みな駒井蓮(れん)さん(20)。父親役には豊川悦司(えつし)さん(59)だ。

青森市や弘前市、岩木山や浅虫海岸などで撮影。監督は横浜聡子さん(43)。青森市の出身で、これまで青森で3本の映画を撮っており、松村さんが指名した。

だが、映画製作はコロナの感染拡大の影響をもろにかぶった。撮影は昨年5月から9月に延期。撮影で青森に入る際は、PCR検査を受けるなど万全の体制で臨んだ。

遅れながらも映画は完成したが、東京の感染拡大が収まらない。試写会や宣伝イベントで青森から映画を盛り上げたかったが、横浜監督は「私たちが東京と青森を行き来すると、青森の人を不安にさせるのではないか」と懸念。

結局、映画完成後は、横浜監督も主演の駒井さんも青森に行くことを控え、舞台あいさつもできないまま、「いとみち」は6月18日、全国に先駆けて、青森県で封切られた。

帰れない県人

だが、「いとみち」は、〝東京の青森〟で盛り上がっていた。繁華街の赤坂にある「アオモリンク赤坂」が、6月から店内にポスターや場面写真を掲示し、関連商品を販売するなど「いとみち」を応援しているのだ。

この「アオモリンク赤坂」という施設。地方創生ブームの5年前、青森市とその周辺の4町村が共同出資して開設したビジネス交流拠点だ。特産品なども販売し、コロナ禍で旅行ができず注目度アップの自治体アンテナショップの機能も併せもつ。代表して青森市が管理運営している。

「コロナ禍で帰省できない在京の青森県人が大勢います。この映画を見れば元気になれる。だから、応援しています」とアオモリンク赤坂の須藤静路(せいじ)さん(49)は話す。

須藤さんの正式な肩書は青森市の東京ビジネスセンター所長。実は、「いとみち」のヒロインの自宅は青森市より弘前市のほうが近い。青森市の職員である須藤さんだが、〝オール青森県〟でコロナ禍を乗り切りたい考えだ。

「いとみち」を推そうと提案したのは、東京ビジネスセンター主幹の野村俊介さん(43)。野村さんは今年4月、東京に着任したが、やはりコロナ禍で一度も帰省できていない。

「青森を舞台に映画を撮ってきましたが、こういう連動は初めて」と横浜監督は喜ぶ。

主演の駒井さんも訪問。須藤さんらは、駒井さんがポスターにサインをするようすを写真に撮ってSNSに投稿した。コロナ禍で青森ではできなかった映画PRが、〝東京の青森〟で果たされた。