記者発

被害者の思い心に刻む 奈良支局・前原彩希

犯罪被害者支援の必要性を訴え、活動を続ける児島早苗さん=奈良市
犯罪被害者支援の必要性を訴え、活動を続ける児島早苗さん=奈良市

人型のパネルに貼られた、笑顔を浮かべる青年の写真。その足元には白に黄色のラインが入った体育館シューズが添えられていた。青年は、平成12年にバイクで登校中、トラックと衝突して亡くなった奈良工業高等専門学校4年の児島健仁(けんと)さん=当時(18)=だ。

「息をひきとったと宣告されても信じがたく、抱きしめ、泣き、叫ぶ、『生きて!生きて!』と」。パネルに記されていた遺族の言葉からは、深い悲しみが伝わる。

昨年11月、事件や事故で亡くなった人たちの等身大の人型パネルを遺品とともに展示する「生命のメッセージ展」を初めて見た。奈良市の会場で知り合ったのが、健仁さんの母親でNPO法人「KENTO」の児島早苗代表(71)だ。児島さんは、平成13年3月の初回から参加してきたメンバーの一人だ。

健仁さんが交通事故に遭った当時、詳しい情報が児島さんに説明されることはなかった。「なぜ息子は事故に遭ったのか…」。切実な思いで事故現場に自ら足を運び、被害者への情報開示を求めて署名活動もした。NPOを立ち上げ、被害者が泣き寝入りせず、納得するまで真実と向き合えるよう犯罪被害者の支援活動に尽力してきた。

メッセージ展が始まって20年となる節目の今年、児島さんが普及を後押しした「犯罪被害者等支援条例」が奈良県内の市町村すべてで施行された。各自治体は条例により、見舞金の交付や必要な情報の提供などを通して、被害者の支援に取り組むことになる。

児島さんは「感謝している。当事者が声をかけて、ここまで実現したところは珍しいのでは」と喜びの声を上げる。今は県内の学校で、メッセージ展や講演会を開いてもらう活動に力を入れている。

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