熱海土石流 「盛り土」計画より増量 県と市、計4回指導

大規模な土石流の起点=5日午後1時49分、静岡県熱海市伊豆山(本社ヘリから、沢野貴信撮影)
大規模な土石流の起点=5日午後1時49分、静岡県熱海市伊豆山(本社ヘリから、沢野貴信撮影)

静岡県熱海市伊豆山(いずさん)地区で起きた土石流の起点付近に大量の盛り土があったとみられる問題で、難波喬司副知事は7日、この土地の元所有者の会社が平成22年までに行った盛り土工事で法律や条例に違反し、県と市から是正指導などを計4度受けていたと明らかにした。当初、届け出られた盛り土計画量は約3・6万立方メートルだったと判明。だが工事は未完了のまま所有者が変わっており、県が被災直前の量として推計した約5・4万立方メートルにまで増えた経緯は不明のままだ。県は難波氏をトップとしたチームを編成して調査を進める。

県などによると、この神奈川県小田原市の不動産会社は、平成18年に土地を取得。19年3月、県の条例に基づき、0・94ヘクタールの範囲に3・6万立方メートルの盛り土を行う計画を、熱海市に届け出た。だが直後の4月、より広い面積に手を入れていると判明。県が森林法違反と判断し、工事一時中止と森林の復旧を指導した。

会社は復旧に応じたが22年8月、今度は土に木くずや産業廃棄物が混じっていると発覚。市と県が撤去を指導した。しかし会社は盛り土を続け、市は10月までに2度にわたり搬入中止を要請。11月になって、関連企業が木くずを搬出した。

工事終了時は「完了届」を市に出す必要があるが、会社はこれを提出しないまま23年2月、所有者が別の個人に変更されたという。

難波氏はまた、盛り土の高さは19年当時の計画では15メートルだったのに対し、土石流発生時は約50メートルになっていたとも指摘した。ただ会社が当時、届け出以上の盛り土をしていたかについては、県と市が指導などで現場をチェックしていたとして、可能性は高くないとみている。

直近10年間の経緯はさらに調査していくといい、難波氏は「とにかく何があったのか、どういう行為や手続きが行われ、指導などがされていたかどうかを洗い出す。行政がなぜ気づけなかったのかという問題も含めて、事実関係を確認していく」と話した。

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