500人超のホテル避難者「先見えない」募る不安 熱海土石流

土石流が直撃した自宅を遠くから眺める湯原栄司さん(左)と妻の珍江さん。避難所暮らしを強いられる中、元の生活を取り戻すのは難しいと感じている=6日午前11時13分、静岡県熱海市
土石流が直撃した自宅を遠くから眺める湯原栄司さん(左)と妻の珍江さん。避難所暮らしを強いられる中、元の生活を取り戻すのは難しいと感じている=6日午前11時13分、静岡県熱海市

静岡県熱海市伊豆山(いずさん)の大規模土石流は7日で発生から5日目を迎えた。県警や消防、自衛隊などによる捜索活動は大量の土砂で難航し、被災住民の避難生活は長期化の様相を呈している。最大避難先の市内のホテルも〝満室〟が近づき、別の施設に移動する可能性も出てきた。先行きが見えず、不安は日増しに募る。

伊豆山地区に住む湯原栄司さん(75)は妻、珍江(よしえ)さん(75)とともに、市内の「熱海ニューフジヤホテル」に身を寄せている。市は当初、周辺の小中学校計5カ所を指定避難所として用意。一方、新型コロナウイルス感染防止の観点から、「密」を回避できる個室があり、「医師と保健師を配置し一括して健康管理もできる」(斉藤栄・熱海市長)との理由で、同ホテルと「ホテルニューアカオ」(同市)の2カ所に避難者を集約した。

もともと新型コロナで休館予定だったニューフジヤホテルには計507人(6日時点)が避難。長雨の影響で別地域でも土石流が発生しかねないとの不安感から、被災エリア以外の住民も続々と身を寄せ、当初見込みの300人程度を大きく上回った。

ただ、受け入れは限界に近づき、6日からは、小中学校の指定避難所へ再び案内を始める事態になっている。加えて同ホテルの休館は9日までの予定で、市は一部の避難者について、まだ収容人数に余裕があるニューアカオ側に移ってもらうことも視野に検討を進めている。

ホテル生活に「今は不自由を感じない」と話す珍江さんだが、今後の話題になると表情が曇る。

6日、夫妻は伊豆山地区を訪れ、泥にまみれた3階建ての自宅を遠目に眺めた。2人は土石流被害で自宅に28時間にわたって閉じ込められ、生還した経験を持つ。栄司さんは「今後、危険地域などに指定されれば、(自宅を)放棄するしかない」と覚悟する。

「これからもここで暮らしたいが、簡単に戻ることはできないだろうね」。夫の意見に同調するように、珍江さんはため息をついた。