米政権、戸別訪問でワクチン懐疑派に働きかけ 接種促進へ

【ワシントン=大内清】バイデン米大統領は6日、ホワイトハウスで演説し、米国内の接種率が頭打ちとなっている新型コロナウイルスのワクチンについて、接種を拒む人が多い地域などを対象に戸別訪問で接種を促していく考えを示した。バイデン氏は、感染力が強いインド由来の変異株(デルタ株)の感染が拡大していることへの懸念も表明、「ワクチンを打つことが自分と家族を守ることになる」と改めて訴えた。

米国内で少なくとも1回のワクチン接種を済ませた成人の割合は6日時点で約67%。バイデン氏が独立記念日の4日までに達成したいとしてきた70%には届かなかったものの、「今週末にも(人口の半数弱にあたる)1億6千万人が接種を完了させる」(サキ大統領報道官)見通しだ。

ただ、一部に根付いているワクチンへの懐疑論を払拭するのは容易ではない。

米国では5月に成人接種率が50%を突破し、対象年齢も12歳まで引き下げられた。一方でワクチンを拒む人も多く、その後は接種率の伸びが鈍った。米ABCテレビと米紙ワシントン・ポストが今月4日に発表した合同世論調査によると、未接種者の74%は「今後も接種するつもりはない」と回答している。

同調査では、接種を拒む人々には新型コロナのリスクそのものを軽視する傾向があることも表れた。未接種者の73%がデルタ株について、「政府当局が脅威を誇張している」と主張。なかでも共和党の支持層や、保守的なキリスト教福音派信者らの間では、民主党のバイデン政権への不信が強く、同調査は「党派による分断は深く、パンデミック(世界的大流行)が政治問題化していることを裏付けている」と分析した。

地域的な隔たりも大きい。米疾病対策センター(CDC)によると、東部諸州や西部カリフォルニア州などでは人口の6割程度が少なくとも1回の接種を受けているのに対し、保守的なキリスト教徒が多いことから「バイブル(聖書)ベルト」と呼ばれる南部諸州の多くでは30~40%台にとどまっている。

バイデン氏は6日の演説で、未接種者への働きかけを強めるため、戸別訪問のほか、各地の薬局で接種を受けやすくしたり、スポーツや音楽などの大規模イベント会場に移動式クリニックを派遣したりする措置をとると説明。夏季休暇明けに通常の学校生活や企業活動を再開できるよう「やるべきことをやるときだ」と呼びかけた。

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