勇者の物語~「虎番疾風録」番外編~田所龍一(263)

将のくじ運 競合外し続け…阪急の凋落招く

4球団で争った末、東海大・原辰徳内野手を抽選で引き当てた巨人・藤田元司監督(右端)
4球団で争った末、東海大・原辰徳内野手を抽選で引き当てた巨人・藤田元司監督(右端)

■勇者の物語(262)

阪急の監督に〝復帰〟した上田利治の最初の仕事は昭和55年11月26日、東京・九段のホテルグランドパレスで開催されたドラフト会議だ。

この年の注目選手は東海大の原辰徳。プリンスホテルの石毛宏典、新日鉄室蘭の竹本由紀夫。そして横浜高の愛甲猛。

1巡目、原を指名したのは巨人、大洋、広島、日本ハムの4球団。阪急は多数球団との競合を避け、西武入りを希望していた石毛を指名。竹本にはヤクルトと近鉄が名乗りを上げ、南海、中日、ロッテ、阪神が単独指名となった。

原の抽選。2度箱の中をのぞき込んで手を入れた日本ハムの三原代表。続いて大洋・土井監督、巨人・藤田監督、広島・松田オーナー。「開けてください」の声で封筒の中の紙を出す。思わず小躍り、満面に笑みを浮かべ、右手に持った〝当たりくじ〟を高々と差し上げたのは巨人の藤田監督だった。

次代のスーパースターが欲しかった巨人に原の当たりくじがいくとは…。上田は西武との2分の1の抽選に敗れた。

広 島 川口 和久 投 デュプロ

ヤクルト 竹本由紀夫 投 新日鉄室蘭

巨 人 原 辰徳 内 東海大

大 洋 広瀬新太郎 投 峰山高

阪 神 中田 良弘 投 日産自動車

中 日 中尾 孝義 捕 プリンスH

近 鉄 石本 貴昭 投 滝川高

ロッテ 愛甲 猛 投 横浜高

日本ハム 高山 郁夫 投 秋田商

西 武 石毛 宏典 内 プリンスH

阪 急 川村 一明 投 松商学園

南 海 山内 和宏 投 リッカー

近鉄・西本監督も散々だった。1位の竹本でヤクルトに敗れ、2位指名した法大・武藤一邦外野手もロッテと競合してまたハズレくじ。「もうやめや!」と3位指名で山崎代表にバトンタッチしたとたんに、福岡大の花房健投手を引き当て、「ほんまにワシのくじ運はようないな」と苦笑い。いや、近鉄のくじ運の悪さを笑っている場合ではない。

阪急も「入札方式」となった53年、巨人と電撃契約を結んだ江川卓を避けて日本鋼管の木田勇を指名し、大洋、広島と競合して抽選で敗れた。54年は早大の岡田彰布を6球団競合で外し、そしてこの55年も…。その後の阪急凋落(ちょうらく)の原因は、このころの「くじ運の悪さにある」といわれている。(敬称略)

■勇者の物語(264)