国立競技場内の感染リスク、1万人に1人未満「富岳」分析

国立競技場=2019年12月15日午後、東京都新宿区(桐山弘太撮影)
国立競技場=2019年12月15日午後、東京都新宿区(桐山弘太撮影)

東京五輪・パラリンピックの会場となる国立競技場に観客1万人を収容した場合の新型コロナウイルス感染リスクについて、適切な感染対策を取るなどすれば、新規感染者を1人未満に抑えられることが6日、理化学研究所の飛沫(ひまつ)拡散シミュレーションで分かった。スーパーコンピューター「富岳(ふがく)」による分析で、最もリスクが高まるケースでも4・7人だった。

ただ、シミュレーションは観客席に座った状態に限ったもので、会場内での移動や、観戦前後の人流増加に伴う感染リスクについては評価していない。

シミュレーションは文部科学省の指示で実施。観客1万人の中に10人の感染者がいる想定で、1階席に4時間滞在し、全員がマスクを着用して終始前向きで会話をすると仮定した。その上で、座り方が「密に着席」と「前後左右に空席あり」、風向きが「後方から」と「前方から」の計4パターンを分析した。

空席を設け、後方から毎秒0・7メートルの風が吹く場合は最もリスクが低く、1万人あたりの新規感染者数は「ゼロに近い」(理研)。同じ条件で座席を密にすると、0・08人に増える。

一方、風向きが前方からに変わると、リスクがさらに高まる。間隔を空けて座り、前方から同0・3メートルの風が吹く場合は0・23人。同じ条件下の密状態では最もリスクが高く、4・7人となることが判明した。

萩生田光一文科相は6日の閣議後記者会見で「国立競技場に限っては、感染を抑えられることが科学的に証明できた」と述べる一方、「人が集まるので、その前後で人流が発生する」とも語り、対策の必要性に言及した。

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