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茨城の「江戸崎かぼちゃ」 手間ひまかけた完熟の味が大人気

丹精込めて栽培した江戸崎かぼちゃを手にするJA稲敷江戸崎南瓜部会の池延美千男部会長=茨城県稲敷市
丹精込めて栽培した江戸崎かぼちゃを手にするJA稲敷江戸崎南瓜部会の池延美千男部会長=茨城県稲敷市

外観は濃い緑色の武骨もの。だが、いったん料理すればホクホクした触感で繊細な甘さがどこまでも優しい。カボチャの産地は全国にあるが、この時期になると茨城の「江戸崎かぼちゃ」が無性に食べたくなる。脇役のイメージが強いカボチャだが、「江戸崎かぼちゃ」は間違いなく、この時期の主役にもなりえる味だ。

「江戸崎かぼちゃ」の最大の特徴は、一般的なカボチャより長く畑で育てて完熟させること。通常は着果から約45日で収穫するが、「江戸崎かぼちゃ」は10日ほど長い約55日後に収穫する。元々は収穫時期が過ぎてしまったカボチャを出荷したところ「おいしい」と好評だったためとされる。

茨城県のJA稲敷は昭和54年に江戸崎南瓜部会を設立し、栽培ルールや品質管理の徹底に務めた。現在は、稲敷市の江戸崎地区や牛久市で24人が栽培している。

平成27年には「夕張メロン」(北海道)、「神戸ビーフ」(兵庫県)などとともに農林水産省の地理的表示(GI)保護制度の第1号に登録されるなど、本県を代表する野菜の1つとなっている。

「江戸崎かぼちゃ」は収穫後もとにかく手間がかかる。水洗いをして乾かし、傷や重さ、形状などからA~C、規格外にランク分けして箱詰めする。出荷前には専門の検査員が部会内全ての品質検査を行っている。検査は目視だけにとどまらず、実際に料理してホクホク感や甘さを確かめるなど入念だ。

JA稲敷江戸崎南瓜部会の池延(いけのべ)美千男部会長(61)は「わずかな傷でランクが下がるほど、1箱1箱厳しく検査している。専門検査員と役員が二重にチェックしており、過剰ともいえる検査体制だからこそ、長年にわたって『江戸崎かぼちゃ』のブラントを守ることができる」と話す。

そんな「江戸崎かぼちゃ」だが、栽培農家の高齢化と後継者不足は深刻だ。生産農家は年々減り、約20年で半減したという。池延部会長は「近年は30人前後で推移していたが、今は24人にまで減ってしまった。このままでは『江戸崎かぼちゃ』自体がなくなってしまう」との危機感もある。

「『江戸崎かぼちゃ』は江戸崎地区のシンボル。何としても守っていきたい」との思いは行政も一緒だ。稲敷市はJAと協力し、昨年、「江戸崎かぼちゃ」を栽培して新規に農業を始める市外の人を対象に地域おこし協力隊員を募集した。

その結果、筑波大を卒業した京都市出身の男性が採用され、ブログを通じて「江戸崎かぼちゃ」の情報を発信。現在は農家を回って研修中だが、将来的には自分自身で栽培することを目指している。夫婦で「江戸崎かぼちゃ」の栽培を始めた人も複数いるなど、こうした新しい動きに池延部会長らは注目している。

さて、「江戸崎かぼちゃ」はどうやって食べるのがおいしいのか。池延部会長は「栗のようなホクホク感を味わってほしいので『江戸崎かぼちゃ』と塩と砂糖、水だけで煮る『ほくほく煮』が一番だ」。JA稲敷の担当者も「女性にはポタージュスープが、子供には素揚げしたフライドカボチャにマヨネーズやケチャップを付けるのが人気で、『フライドポテトに似てるけど、こっちのほうがおいしい』と評判です」と太鼓判を押していた。。(篠崎理)