「外交努力」国内アピール 韓国大統領の訪日意向

韓国の文在寅大統領(韓国大統領府提供・共同)
韓国の文在寅大統領(韓国大統領府提供・共同)

【ソウル=時吉達也】23日に開会式を迎える東京五輪に合わせ、韓国政府が文在寅(ムン・ジェイン)大統領の訪日の意向を日本側に伝えたことが明らかになった。日韓関係改善に向けた「外交努力」を韓国内にアピールする狙いとみられるが、来年3月に大統領選を控えた中、歴史問題で「対日譲歩」を許す雰囲気は薄れつつある。日本との具体的な協議の進展は期待できないのが実情だ。

「首脳会談開催などの成果が前提なら可能性は開かれているが、現在は(日本との協議を)見守っている状況だ」。大統領府関係者は6日、KBSテレビの取材にこう答え、文氏訪日の可能性を否定しなかった。

文氏は3月、東京五輪が南北や米朝間の「対話の機会になる」と期待を示したが、北朝鮮が4月に五輪不参加を表明したことで構想は頓挫した。菅義偉首相との会談開催も困難とされたことで訪日の目的は失われ、五輪開会式には黄熙(ファン・ヒ)文化体育観光相が出席する方向で調整が進んでいた。

今回、日本側が首脳会談開催の意向を示したことで、文氏訪日の〝障壁〟は取り除かれる形だ。任期5年の最終年を迎え内政で政権浮揚への材料に乏しい中、会談が実現すれば外交実績をアピールする場となる。

しかし、6月に英国で開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)で、簡略な首脳会談を日本側が一方的にキャンセルしたという韓国メディアの報道が影響し、世論調査では文氏の訪日への「賛成」が約33%にとどまっている。

また、大統領選レースの本格化に伴い、与党の候補者らは党内予備選のカギを握る左派支持層を意識し、対日姿勢を硬化する。歴史問題をめぐり、文政権が日本側の要求する「代案」を準備すれば、候補者らからの批判が集中するのは避けられない情勢にある。

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