中東ウオッチ

「反米プロジェクト」最終形 イラン大統領選 最高指導者の狙い

6月16日、イランの首都テヘラン中心部の大通りには、投票を呼びかける大型の看板が掲げられていた(佐藤貴生撮影)
6月16日、イランの首都テヘラン中心部の大通りには、投票を呼びかける大型の看板が掲げられていた(佐藤貴生撮影)

6月18日投票のイラン大統領選で反米の保守強硬派、ライシ司法府代表(60)が圧勝し、国際協調を掲げた穏健派のロウハニ大統領に代わって8月に就任する。反米保守政権の登場は8年ぶりだが、選挙の舞台裏で最高指導者ハメネイ師の強い意向が働いたとの見方が多い。「反米プロジェクト」は昨年には始動し、大統領選は欧米との融和を求める有権者層の離反を加速した。ハメネイ師が率いるイランの行く末には危うさもちらつく。

出来レース

大統領選が間近に迫った6月16日。イランの首都テヘランの大通りには、多くの人が投票用紙を掲げる様子を描いた巨大な看板が掲げられていた。投票を呼びかける当局側の宣伝だ。

しかし、大統領選の投票率は48・8%と1979年のイラン革命以降で初めて半数を割り込んだ。その投票のうち無効票は370万票で2位の候補の得票数を超え、体制支持の低落ぶりを示した。テヘラン大のフォアド・イザディ准教授は「現体制は人民による革命の生産物であり、国民の政治参加によって正当性を得る必要がある」と、投票率が持つ意味の大きさを説明した。

低調だった今回選でライシ師は約62%の票を獲得した。一見すると圧勝だが、出来(でき)レースの印象はぬぐえない。候補者の適性を事前審査する機関「護憲評議会」が約600人の立候補申請者を7人まで絞り、欧米との対話に前向きでライシ師の対抗馬と目された穏健派の有力者、ラリジャニ前国会議長も失格となった。

イランでは大統領は行政の長に過ぎず、国政全般の決定権は最高指導者が握る。12人で構成される評議会も最高指導者の強い影響下にある。ハメネイ師が影響力を発揮し、なりふり構わずライシ師を大統領に据えたといわれるゆえんだ。

反米を次世代へ

昨年2月下旬の国会(定数290)選挙の直前、テヘランの大通りには、革命防衛隊のソレイマニ司令官を中心に国民が集う様子をあしらった大型看板が飾られていた。

ハメネイ師の最側近の一人で、周辺国への影響力浸透を図る政策の責任者だった同司令官は、国会選の約2カ月前、隣国イラクで米軍に殺害されており、反米の保守強硬派にとって選挙戦は「弔い合戦」の様相を呈していた。

護憲評議会はこのとき、1万6000人以上の立候補申請者を7000人超に絞り、ロウハニ大統領と同じ穏健派や改革派の候補の多数が失格となった。開票の結果、保守強硬派が全議席の7割超を占め、穏健・改革勢力から国会での優位を取り戻した。投票率は革命以降で最低の42・75%だった。