立憲民主党は4日の東京都議選で伸び悩み、反自民票の受け皿になりきれなかった。党に勢いが出ない一因として挙げられるのが、枝野幸男代表の回りくどく、分かりにくい発言だ。公約を実現できずに失望を買った旧民主党政権の反省から、後で揚げ足を取られないよう予防線を張っているようだ。枝野氏は都議選で自民党への不信感が露呈したとして、次期衆院選で政権交代につなげたい考えだが、分かりにくい「枝野文学」は気迫不足に映る。
福山哲郎幹事長は5日未明、自民党が地域政党「都民ファーストの会」に肉薄された都議選の結果について「自民党に対する根強い批判の声が明らかになった」と記者団に述べた。
ただし、立民の議席も伸び悩んだ。改選前からほぼ倍増となる15議席を確保したものの、33議席の自民や31議席の都民ファの半分以下に終わった。
立民が自民の対抗軸になれない一因としてメッセージの弱さが挙げられる。
枝野氏は6月15日の衆院本会議で「時限的な消費税率5%への引き下げ」を打ち出した。ところが記者団には「選挙公約ではなくて、政権として実現をすると申し上げた」と答えた。
周囲は公約になると考えており困惑も広がった。枝野氏は都議選告示日の25日にようやく「選挙に向けた政策に入れてもらう」と公約化を認めた。なぜ最初から明言しなかったのか。
「ミスリードしないでいただきたい。(減税は)法改正しなければならない。(衆院選で立民が勝っても)参院は自民、公明両党が過半数を持つ。野党(自公)に協力を求めることまでは明確に約束できる」
枝野氏は演説の2日後、記者団にこうも語った。つまり、有権者に「選挙目当てに実現困難な政策を訴えている」と受け止められることや、政権交代しても実現できなければ「公約破り」と批判されることを懸念しているのだ。
背景には、旧民主党政権の失敗がある。高速道路無料化など目新しい政策を示し、財源は「埋蔵金」の発掘や無駄の削減で捻出すると掲げたが、実現できずに3年3カ月で下野した。
予防線を張る発言は、菅義偉内閣不信任決議案を提出する際も目立った。早い段階で提出する方針を固めていたのに、「新型コロナウイルス禍にもかかわらず政局優先」との批判を懸念するあまり、5月に「現状では提出できない」と記者団に述べ、政権奪取の本気度が疑われた。結局、6月15日に出した。
「原発ゼロ」も、平成29年に旧立民を立ち上げた際は「一日も早く実現する」と明確に掲げたが、最近は実現可能性を意識して慎重だ。今年2月の西日本新聞のインタビューでは「原発をやめるということは簡単なことじゃない」と語り、「後退したのでは」と波紋を呼んだ。
都議選後、党都連会長の長妻昭副代表は「衆院選を見据え、かつての『コンクリートから人へ』のような分かりやすいメッセージを磨かないといけない」と語った。現状の発信力では政権の選択肢になるのも難しいといえる。(田中一世)