沈黙のウイグル族 ウルムチ暴動12年、コロナで厳戒

新疆ウイグル自治区カシュガルの中心部の繁華街。人通りが多い場所では3人一組で巡回する警官の姿が目立つ=6月22日(三塚聖平撮影)
新疆ウイグル自治区カシュガルの中心部の繁華街。人通りが多い場所では3人一組で巡回する警官の姿が目立つ=6月22日(三塚聖平撮影)

中国新疆(しんきょう)ウイグル自治区ウルムチで2009年に発生した少数民族ウイグル族の大規模暴動から5日で12年となった。暴動は当局が「テロ対策」の名目でウイグル族への抑圧を強化した一つの契機。自治区では当局が新型コロナウイルス対策として厳戒態勢を強める状況もうかがえる一方、ウイグル族は沈黙を迫られていた。(新疆ウイグル自治区 三塚聖平)

「新疆は良い所。各民族が幸せに暮らしている」

暴動で激しい衝突があったウルムチ中心部の国際大バザール(市場)ではウイグルの軽快な民族音楽が流れていた。歌詞は標準中国語(漢語)だった。

街は地下鉄駅ができるなど観光地として整備が進み、暴動の痕跡を示すものはみられない。ただ、多くの監視カメラが異様な雰囲気を漂わせていた。

自治区では共産党政権下で漢族の大量流入が続いてきた。200人近い死者が出た暴動の背景には、そうした中で強まったウイグル族への差別的な扱いや両民族の経済格差が背景にあったと指摘される。だが、中国政府はウイグル族の抜本的な不満の解消よりも、治安対策を優先させた。

19年の発表によると、14年以降、自治区で1万2995人を「テロリスト」として拘束。「脱過激化」のためとして「職業技能教育訓練センター」にウイグル族らを収容した。国連人種差別撤廃委員会は収容人数を100万人以上と報告。国際社会では「強制収容」との批判が高まっている。

ウルムチ出身という漢族の男性タクシー運転手は「治安は良くなった。ウイグル族に教育を施して働けるようにしているのに、海外(諸国)が大げさに言っている」と批判を一蹴。ウイグル族については「警戒感は残っている。経済的にも漢族より支援を受けている」と語り、両民族の亀裂の深さをうかがわせた。

特に監視態勢が厳しいのは、ウイグル族が人口の約9割を占めるカシュガル。至る所で3人一組の警官が警棒や盾を持ち巡回していた。「カシュガルは好きか?」。ウイグル族のタクシー運転手に質問すると言葉を濁した。運転席と後部座席には防犯カメラが設置されていた。監視や密告を恐れているとみられる。

厳戒態勢はコロナ対策としても強まっている。

「住民か、事前に団体旅行の予約がないと町には入れない」。小説「西遊記」の舞台となった火焔山(かえんざん)で有名なトルファンの高速鉄道駅で、防護服姿の女性が冷たく言った。上海から子供を連れて旅行に来た男性は「中国各地でこんな所はない」と憤った。

ウルムチやカシュガルのホテルでは、チェックイン時に館内に設けられたPCR検査場で検査を受けることを求める。コロナ対策が厳しい中国でも他にない態勢で、ワクチンを打っていても例外は許されない。

トルファンで教師をしている漢族男性は「各地では検問所が多く設けられ、以前は対象外だった漢族の車も一律に調べられる」と説明。過去にテロ事件が起きた場所で特に警戒が厳しくなっているとささやいた。

ウルムチ暴動 2009年7月5日、新疆ウイグル自治区ウルムチで起きた大規模暴動。広東省の工場でウイグル族が漢族に襲われて死亡した事件への抗議デモがきっかけとなり、一部が暴徒化し漢族や治安部隊と衝突。当局発表で197人が死亡、1700人以上が負傷した。