Beyondコロナの社会をどうデザインするか

未来の都市デザインをどう描くか語り合った
未来の都市デザインをどう描くか語り合った

75周年迎えた中央復建コンサルタンツ

昭和21年に社団法人として創業した中央復建コンサルタンツ(大阪市)は戦災で社会基盤を失った日本の復興を目指し、鉄道・道路・港湾などの交通や施設の計画、設計に参画してきた。まさに戦後日本とともに歩んできた建設コンサルタント会社だ。昨年からのコロナ禍、そしてデジタルテクノロジーのすさまじい進化は、もはや新常態への適応ではなく、大胆な変革への視点を持つことを社会や企業、そして私たち一人一人に迫っている。創業から75年を迎えた同社が、経済学における社会資本(インフラストラクチャー)の基盤整備だけでなく、社会学的見地に立った未来の都市デザインをどのように描いていくのか。そのために必要なこととは。同社の兼塚卓也社長と、クリエイターの甲賀雅章さん、写真家の山崎エリナさんに語り合ってもらった。

未来から今何をすべきかを考える

兼塚卓也社長
兼塚卓也社長

――新型コロナウイルスの影響はどうですか

兼塚 働き方が大きく変わりました。コミュニケーションの手段が対面からウェブ対応になりましたが、当初はスムーズにいかず、ようやく慣れてきた感じですね。一つ気になる点は、若手が孤独を感じる危険性があることです。一緒の部屋なら分からないことを先輩に相談できました。テレワークでも技術的に相談はできるのですが、壁がありますよね。去年の新入社員は、先輩社員の名前と顔も分からない状況でのテレワークで、コミュニケーションの取り方に苦労する社員も見受けられました。

甲賀 イベントや公演関係者はお手上げですよね。例えば、設営業者や音響、照明、そして広告、デザインなど、イベントを陰で支える人たちへの影響はもうすさまじいですね。

役者、ダンサーなどのアーティストへの影響も深刻です。日本の文化芸術政策があまりにもひどいというのが、コロナで露見したと思いますよ。

例えばドイツのメルケル首相は、この状況下で一番支援すべきなのはアーティストだと言ったんですよ。精神的に疲弊しているときにこそ芸術は必要だといい、アーティストを支援しました。日本は最後の最後でしたね。生活における芸術や文化の必要性を感じていないのだと思います。

デザイン専門学校の講師もしていますが、去年の新入生は初めからオンライン授業です。非常に興味深かったのは、さまざまな格差などが見えてきたことです。まずは経済格差。住環境や通信環境の違いで、学習にも影響が出ます。もう一つは生徒の人間性。オンラインの方が人や周りに気を使わなくて楽という生徒がかなりいたことです。これは大きな発見でした。最後にデジタルテクノロジーへの対応能力の格差。特に先生のなかに見られましたが、これからの社会を物語っていると思います。格差社会の再来ですよ。

山崎 一昨年11月のルーブル美術館の写真展はなんとか開催できましたが、その後は軒並み延期になってじだんだを踏んでいるところなんです。私は実際にインフラメンテナンスの現場に行き、人と会って撮影します。緊急事態宣言で撮影は延期になるのですが、現場はずっと動いているということにあらためて気づかされましたね。

最初に撮影でインフラメンテナンスの現場に入らせていただいたときに人がとにかく輝いていて魅せられました。今、コロナ禍もありICTが導入されてきていますが、現場で動かしたり、点検したりするのはやっぱり人です。コロナ禍でも試行錯誤しながら工夫して後輩への指導もされているのはすごいと感じます。

山崎エリナさん
山崎エリナさん

――コロナによって露呈した格差を埋めるのも社会インフラの役目と思いますが、これからの都市やインフラの役割は

兼塚 まちのあり方が、モビリティー中心から、人中心に考えていく時代になっていくように思います。コロナ禍でテレワークが進み、買い物や食事もネットで注文するとなれば、まちへ出かけなくてもいい。では、まちはなぜ必要なのか、価値観が変わってくるでしょう。

人の交流がどんどん減るなか、逆にまちには人が遊べたり、学べたりする、交流できる場所の役割を持たすことが大事だと思います。

また、地方にとってはチャンスですよね。実際、都会から離れて住む人が増えてきていると聞きます。普段は少し田舎に住み、必要なときだけ都会に来る。そんな生活スタイルに合わせたインフラ作りが今後の役割かなと思いますね。

水平型世界の拡大で交流図る

――甲賀さんは、これからのまちづくりのキーワードは何だと考えますか

甲賀 未来における人と都市の良い関係とは何なのかということをもう一度デザインしなおす必要があると思います。過去からの延長線上で考えてはいけません。全く別の社会が訪れるのですから。

例えば、多くのホテルやオフィスビルを見れば分かるように、一つの建物を垂直に使うことで全ての機能を押し込めようとしてきました。地下に駐車場やコンビニ、一階にはロビー、途中階や最上階にはレストランやカフェ、これを水平型に機能を分散させたらどうなるのか。

そう考えたときに、みんなが利用できる広場が必要です。日本では空き地はいっぱいありますが、本当の意味での広場の機能を持ったところがありません。広場はある種のコモンズ、共有地です。さまざまな情報や催事が交錯する場で、出会いの場でもあります。そこには、その国や地域、都市の固有の文化が見えてきます。

中央復建コンサルタンツが協力した中之島通の歩行者空間化(公園化)事業
中央復建コンサルタンツが協力した中之島通の歩行者空間化(公園化)事業

――山崎さんは世界各国周られて、好きなまちのイメージはありますか

山崎 私は路地が好きなんです。ヨーロッパやブラジルのスラム街にも入り込んだのですが、そこには路地が残っていて、お手洗いも共同の、水洗じゃないトイレがあって、そこを子供たちが裸で走り回って遊んでいる、路地に国々の生活が見えました。

今の日本は、甲賀さんがおっしゃった通り縦型の生活も増えて、実際に東京にいるとビルがあって空が見にくい。水平型の世界がどんどん広がっていくと、自然とコミュニティーがつながるまちに私自身も身を置きたいですね。

甲賀 路地も水平ですよね。ビルの間に小道はいっぱいあるけど、あれは路地じゃないよね。やっぱり水平的に、そこに住む人や商いをしている人たちの顔が見えるのが、路地だと思います。

兼塚 路地などは非常に大事だなと思いますよね。京都の先斗町のイメージをちょっと思い出しましたけど、ああいう空間も含めて、まちというのは残していくことも大事なんですね。

大阪の御堂筋もなかなか人が集まりませんが、にぎわい創出には裏の路地とかもセットにして広い範囲で考えていかないと難しいんでしょうね。梅田から難波まで、あれだけ広く長いメインストリートをうまく使わないと、もったいない。シャンゼリゼ通りよりも長いんですよね。

――大阪は2025年には万博があります。IRも来ます。大阪、関西の魅力はなんでしょうか

山崎 コミュニケーション能力、そして人をお迎えする心ですね。大阪の人にお店を案内してもらうと、えっ、この路地、行くのっていう細い路地を通っていくとすごい、ここ、おいしい、おじさん、怖そう、でも、とってもフレンドリーであったかいみたいな。発見の楽しさというのは大阪の魅力だなと感じます。

甲賀 大阪は、おもろいですよ。大阪の人にとって「おもろい」は最高の誉め言葉なんですね。だけど、伝えるのが下手ですよね、大阪人って。めちゃくちゃ弁がたつように思うのですが、実際はシャイですよね。だから大阪の本当の良さが伝わらない。上辺だけで大阪のイメージを他県の人は持ってしまう。粉ものにお笑い。まさにダシ文化の奥深さが伝わっていないのです。もったいないですよ。

僕は、「上方」という言葉を復活させたほうがいいと言っているんですよ。近代文化の基本は、食も芸事、風俗もすべて上方じゃないですか。上方文化をもっとかみ砕いて、まちづくりに生かすべきだと思う。リトル東京では駄目ですよ。

兼塚 関西はオリジナリティーを求める民族性があると思います。できれば、東京のまねはしたくないという思いが根っこにあるんですよね。それは大事なものなんです。

リニアが大阪まで延伸されれば、東京と1時間で結ばれます。一つの圏域になってしまうと、大阪の色を持っておかないと、東京に吸収されてしまいます。大阪色だけじゃなく、京都、神戸、さらに日本海、瀬戸内海、太平洋を抱えている関西の資産を十分に生かすインフラ整備を考えないといけないですね。

文化資本をどう醸成させるか

甲賀雅章さん
甲賀雅章さん

――これからの大阪、関西の街づくりで重要なのは何でしょう

甲賀 先ほどデザインし直す必要性があると言いましたが、従来の問題解決型ではなくSpeculative Designという概念が重要だと思います。現在の延長線上ではなく、目指す未来をまず設定し、そこから考えるのです。可能性を示す問題提起、思索型の思考です。また、今後の都市を考えた場合、3つ資本が重要だといえます。1つは社会学的にとらえる社会資本(経済学的にはインフラストラクチャーを指しますが)。つまり社会的ネットワークによる人間の信頼関係です。2つ目は経済資本、そして忘れていけないのが文化資本です。今後、文化資本が蓄積されない都市は絶対に衰退します。魅力を失います。文化資本をどう醸成させるか、あるいは文化資本をインフラの中にどう組み込んでいくかが、これからの都市デザインの最大のミッションです。大阪は、上方文化というベースもありますから、例えば30年計画で上方文化都市構想を掲げたらどうでしょう。

兼塚 甲賀さんがおっしゃったような計画や夢をどんどん語れる業界にしたいと思っています。

社会資本と文化資本の関係は、常に意識していなければならないですね。私たちインフラ整備に関わる技術者は、国民にとって必要なインフラのあるべき姿を考え、簡単に妥協しないとか、これまでの事業の進め方にとらわれないとか、強い信念をもって取り組むことが必要だと思います。甲賀さんの話に勇気をもらいました。いろいろな人を巻き込んでやるのが大事だと思いましたね。

しかし、今後われわれの役割はますます大きくなります。戦後75年経ち多くのインフラの寿命が問題となっています。作るだけではなくインフラの老朽化対策も待ったなしでコンサルタントの知恵が必要です。もっと、この仕事への期待や楽しさを多くの皆さんに知ってもらい、業界を発展させたい。

その意味では、万博は大きなチャンスです。空を飛ぶ車とか様々な実証実験が行われますので、自由な発想で新しいことをどんどんやりたい。今までのインフラ整備のやり方ではなく、スペキュラティブな考え方で大阪オリジナル、関西オリジナルなものを生み出したいですね。

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プロフィール

やまさき・えりな 神戸市出身。平成7年の阪神大震災で自宅が全壊。「好きな写真を撮って生きていきたい」と決意して渡仏。3年間、パリを拠点に40カ国以上を旅して撮影活動を展開、エッセイも手掛けた。海外での評価も高く、国内外で活躍する。橋梁やトンネルなどインフラ工事現場で働く人に見せられ、撮影した写真集を相次いで出版し、迫力ある作品が話題を集めている。土木写真集に『インフラメンテナンス』など、最新刊『鉄に生きる』がある。

こうが・まさあき 静岡市出身。平成3年、株式会社シーアイセンターを設立。デザイン、文化戦略を21世紀型経営の最重要資源と位置づけ、企業や地方自治体、商店街などの活性化に取り組む。イベントプロデュースや劇場の企画運営にも携わり、24年から大阪府江之子島文化芸術創造センター館長を務める。さらに役者、ダンサーとして舞台に立つなど多彩な活動を展開している。

提供:中央復建コンサルタンツ株式会社