九州北部豪雨から4年 復興へ動く 福岡・朝倉市

松末地区の水田で歓声を上げながら田植え体験に挑戦する参加者
松末地区の水田で歓声を上げながら田植え体験に挑戦する参加者

福岡、大分両県で死者・行方不明者42人を出した九州北部豪雨から、5日で4年。福岡県朝倉市役所では同日午前、サイレン吹鳴の後、黙禱(もくとう)し犠牲者の冥福を祈った。甚大な被害を受けた同市松末(ますえ)地区では、なお傷跡が癒えない中、住民たちが復興へ一歩踏み出している。

「伝承広場」整備へ

35人が犠牲になった朝倉市。その中で最も被害が大きかったのは赤谷川を抱える松末地区だ。同市の全壊・大規模半壊家屋は379棟だったが、このうち約3割の104棟が松末地区。259世帯あった同地区の74%が被災した。

市は、被災した1069世帯を対象に、恒久的な住まいを確保した「本再建」状況を定期的に調査している。今年4月にまとめた本再建状況では、松末地区の被災世帯の本再建率は84・0%だが、このうち地区内で再建した世帯は29・4%(40世帯)にとどまった。残りは市内の他地区や市外へ転出していた。市は松末地区に小規模の住宅団地を今年度中に造成、宅地のかさ上げなどを通じて帰還を促進したい考えだ。

また、同市では、災害の経験と教訓を次世代につなぐため、大きな被害を受けた松末地区に「伝承広場」(仮称)を整備をすることを決めた。災害の中心地だった赤谷川上流に面した崩谷(くえんたに)に計画。新たに建設されている砂防ダムや川幅の拡幅工事が進む河川、造り直される農地などが見渡せる場所を想定している。広場には被害状況などを説明したパネルも展示。市復興推進室は「災害復興のシンボルであり、防災学習に活用したい」としている。

交流人口の拡大目指し

6月20日、松末地区に歓声が響いた。住民自治組織「松末地域コミュニティ運営協議会」が開いた田植え体験イベント。福岡市などから家族連れを含む33人が参加し、地域住民の指導で全員一列になって30センチ間隔で田植えを体験した。泥だらけになりながらも約10アールの水田で植え、福岡市中央区に住む夫婦は「田植えは初体験だが、楽しかった」と笑顔を見せた。

建設が進む松末地区の砂防ダム
建設が進む松末地区の砂防ダム

同協議会は初めて、農山村の暮らしを体験してもらおうと年間プログラムを作った。7月の防災学習とトウモロコシ収穫、10月の稲刈りと芋掘り、12月のしめ縄作りとコンニャク作りなどを計画する。同協議会の高倉保之会長は「被災前に比べ地区住民は4割程度に減ってしまった。定着は無理にしても、せめて交流人口だけは増やしたい」と企画の狙いを語った。

河川工事や防災ダム建設が進む松末地区では、さらに廃校となった松末小学校跡を、復興事業へ取り組む拠点として活用する方針だ。赤谷川支流の乙石川から取水し、校舎敷地内で小水力発電ができないかも調査している。

ハード面の復旧とともに住民たちも地域復興へ一歩動き出したように見える。(永尾和夫)