主張

熱海市の土石流 「気象の凶暴化」に警戒を

映像が猛威と恐怖を如実に物語る。静岡県熱海市の市街地を襲った土石流は、家屋をなぎ倒し、車をのみ込み、急坂をごうごうと流れ落ちていった。とてもではないが、抗(あらが)うすべはない。いち早い避難のみが身を助ける手段である。

黒灰色のベルトとなった土石流の傷痕は生々しく、警察や消防、自衛隊の懸命の救助活動が続いているが、なお多数の安否が不明となっている。まず捜索に全力を挙げてほしい。

日本列島の南側にある太平洋高気圧が張り出しを強めて梅雨前線を北上させた。南から大量の湿った空気が前線に向かい、広い範囲に記録的な大雨を降らせた。

神奈川県平塚市は3日午前、複数の河川で水位が上昇したとして改正災害対策基本法に基づく最高ランクの「緊急安全確保」を全国で初めて発令した。

熱海市は2日午前、レベル3に当たる「高齢者等避難」を出して住民に注意を喚起したが、より強い「避難指示」は見送り、土石流の発生後に「緊急安全確保」を発令した。結果的に対応が後手に回ったことになるが、行政ばかりを責めることはできない。

水害から命を守るためには、避難や安全確保の行動を早め早めに実行することが肝要である。

被災現場周辺は、静岡県が「土石流危険渓流」に指定していた。熱海市のハザードマップでも地区一帯で土石流の可能性が高いと指摘していた。

土石流は低い方へ低い方へと進路を選ぶ。その特性を考慮し、日ごろから避難場所、避難経路を各自で確認しておくことが求められる。自らの命を守るためだ。

日本は海と山の国である。熱海市の被災現場のような、急傾斜地に栄えた町は全国各地にある。地震による津波と同様、いつ何時、土石流のような災禍に襲われるか分からない。

自身が暮らす地区はどんな被災の可能性があり、どうすれば難を逃れることができるのか。平時の準備こそが大事となる。まず家族で、職場で、いざというときの行動を確認し合っておこう。

近年では、1時間に50ミリ、あるいは100ミリを超えるような猛烈な豪雨の発生回数が増えている。猛暑や熱波、強風などを含め、気象が激甚化、凶暴化していることは間違いない。天気をなめてかかってはいけない。