正論8月号

対中非難決議阻む国会の闇を告発する 衆議院議員 長尾敬

「アジアの民主・自由・人権を尊重してくださいデモ行進」が国連大学前を出発した。ウイグル、ミャンマー、チベット、南モンゴル、香港、カンボジアの各団体の代表が参加した =9日、東京都渋谷区の国連大学前(関勝行撮影)
「アジアの民主・自由・人権を尊重してくださいデモ行進」が国連大学前を出発した。ウイグル、ミャンマー、チベット、南モンゴル、香港、カンボジアの各団体の代表が参加した =9日、東京都渋谷区の国連大学前(関勝行撮影)

※この記事は、月刊「正論8月号」から転載しました。ご購入はこちらをクリック

通常国会は六月十六日に閉会しましたが、「新疆ウイグル等における深刻な人権侵害に対する非難決議案」を採択できなかったことは痛恨の極みです。私たちはあきらめていません。決議案は法案ではないので廃案になっていません。近いうちに議連の協議会と民族団体の協議会で報告会を行い、総選挙後の臨時国会でもう一度採択に向けた意思を示すつもりです。現時点では平和と人権の党である公明党が慎重に協議をするという状況ですので、ぜひ賛同していただきたいと改めてお願いする次第です。

採択に向けた決議案をめぐる動きを私が見聞きした範囲で振り返っておこうと思います。

まず中国の人権弾圧問題に関する国会決議の構想が浮上したのは今年一月です。米国で昨年末、チベット自治区での中国共産党政権による人権弾圧に対し自治区での人権や信教の自由を擁護するチベット人権法が成立しました。同法についてダライ・ラマ法王日本代表部事務所のアリア代表が私の事務所に来られた際、日本の国会でもチベット人権法を作ってほしいという提案をいただきました。

そのことを、私が事務局長を務める超党派「日本チベット国会議員連盟」会長の下村博文自民党政調会長に話して、日本の法律になじむような人権法を作れないかとのご指示を受け、衆議院法制局に相談したのですが、やはり日本の法律になじまないんです。というのも、米国のチベット人権法はラサに領事館設置といったような実現困難なことを書いているのです。日本の法律はできることしか書かない。こうしたやりとりの中から、法律の前段として国会決議を先にやるべきだろうということになったのです。

これを機に、ウイグル、チベット、南モンゴル、香港、ミャンマーそれぞれの超党派議員連盟の方々に集まってもらって協議会を立ち上げました。協議会のメンバーに無所属議員や社民党所属議員は入っていませんが、国会決議を取るための会派はそろいました。

一方で、国会議員の協議会のカウンターパートとして、私からお願いして、ウイグル人など当事者民族の十三団体からなる「インド太平洋人権問題連絡協議会」を作ってもらいました。ミャンマーも香港も入っているし、臓器移植問題に取り組んでいる方々もいらっしゃいます。いずれは臓器移植問題も取り上げたいとの考えがあるからです。ただ、今回は最初の一歩として国会決議という最大公約数を取らなければいけないという事情がありました。協議会の事務局を私がやって民族団体側協議会の事務局は自由インド太平洋連盟副会長の石井英俊さんに務めていただき、民族側の感情を抑えてもらいながら意思疎通を図りました。

そして、法制局も入れながら修文に修文を重ねながら作ったのが今回の決議案の原案です。当初はふんだんに中国を名指ししていましたが、最終的に「中国」は消えました。多くのご批判があることは承知していますが、決議は全会一致が大原則であることを踏まえた協議会の政治的判断です。それに、残念ながら、自民党の親中派、そして特に公明党は「中国」という言葉を入れたら絶対に賛成しないでしょう。率直に言えば、与野党・党派を超えた親中派に対する、したくない配慮です。

改めて思うのは、このような文書に「中国」を入れてはならないという不文律みたいなものが国会にはあるのです。読めば中国のことを言っているとわかるから、あえて「中国」をいれなくてもいい、と。その不文律、慣習はいつかぶっ壊してやりたいと思います。

相次ぐハードル

決議案は三月三十一日に自民、公明両党の幹事長・国対委員長会談(二幹二国)にかけられました。四月九日に予定されていた日米首脳会談(その後、四月十六日に変更)に向け、菅義偉首相が訪米する前の決議採択を目指しました。

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「正論」8月号 主な内容

【特集 「平時」からの脱却】

菅首相に求む安保の有言実行 国家基本問題研究所理事長・ジャーナリスト 櫻井よしこ

対中非難決議阻む国会の闇を告発する 衆議院議員 長尾敬

なぜアビガンは承認されないのか 本誌編集部

厚労省審議会非公開議事録全文掲載

武漢ウイルスとの戦い 日本は敗北したのか 評論家 八幡和郎/医師・元厚生労働省技官 木村盛世

ワクチンめぐる中台の攻防〈チャイナ監視台〉 産経新聞台北支局長 矢板明夫

感染症と自然災害に強い社会へ 緊急事態に対応する国会・国民的議論を ニューレジリエンスフォーラム発足

「翼賛体制」の必要性を問う 文芸評論家 富岡幸一郎

【特集 切り崩される保守】

LGBT法案で残念な稲田朋美氏 〈「政界なんだかなあ」特別版〉 産経新聞政治部編集委員兼論説委員 阿比留瑠比

左傾化する自民党を恥じる 自民党政調会長代理・参議院議員 西田昌司

日本共産党の同性愛差別史 元板橋区議(元日本共産党区議団幹事長) 松崎いたる

〝人権屋〞がのさばる入管行政 モラロジー道徳教育財団道徳科学研究センター教授・麗澤大学客員教授  西岡力

ウイグル人救えた入管法改正案 評論家 三浦小太郎

自公に代わる保守・中道政党を 国民民主党・新緑風会事務局長 岡崎敏弘

【特集 メディアぶった斬り】

産経新聞が「ダメな」根源的理由を論ず 元産経新聞社専務論説委員長 吉田信行

「脱炭素祭り」の先棒担ぐ日経新聞 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹 杉山大志

東京五輪開催で焦る朝日新聞 元東京大学教授 酒井信彦

【特集 自衛隊は便利屋にあらず】

菅首相、自衛官に名誉と誇りを 大田区議会議員・元空自予備自衛官 犬伏秀一

「よろず屋」扱いでいいのか ジャーナリスト 小笠原理恵

危機管理集団の自衛隊衛生を知る 医療法人社団恵養会武田クリニック・前自衛隊中央病院長 上部泰秀

【特集 コロナ禍と企業経営】

危機をプラスに転換する好機だ ホテルニューアワジ会長 木下紘一

乗り越えられたら必ず灯はある 株式会社紀伊國屋書店代表取締役会長兼社長 高井昌史

負けへんで 絶対ひっくり返したるっ お好み焼きチェーン「千房」株式会社代表取締役社長 中井貫二

▶苦境の拉致被害者へ 日本の声絶やさない 特定失踪者問題調査会幹事長 村尾建兒

▶カンボジアで芽生えた日本への憂慮 地雷処理専門家 高山良二

▶渋沢栄一が生かした日本思想の伝統とは 評論家 中野剛志×早稲田大学非常勤講師 大場一央

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