ソウルからヨボセヨ

北のダイエット政治学

29日、北朝鮮の朝鮮労働党政治局拡大会議で演説する金正恩総書記(朝鮮中央通信=共同)
29日、北朝鮮の朝鮮労働党政治局拡大会議で演説する金正恩総書記(朝鮮中央通信=共同)

北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記のダイエットが話題になっている。その姿について北のメディアが「おやつれになられた」といって人民は涙を流していると伝えたため、内外であれこれ臆測が出ている。しかし神格化された指導者の外見に関わる北朝鮮当局のこうした〝宣伝工作〟は今回が初めてではない。

父・金正日(ジョンイル)についても2009年4月、全く同じ風景があった。前年、脳卒中で倒れた後、それまでのおなかを突き出した肥満体とは異なる激痩せした姿で登場した。当時68歳だったが、頰がこけシワだらけになった表情には老いと衰えが目立った(2年後に死去)。当時、北のメディアは工場視察での様子として「(工場支配人らは)あまりに胸が痛み言葉を発することができず、むせび泣く顔には涙がとめどなく流れた」などと伝えている。

王朝的な独裁国家の北朝鮮では肥満は富や権力、権威の象徴である。人民は指導者の肥満姿に安心し、信頼と忠誠を誓うのだ。

これを〝肥満の政治学〟というが、父の時は痩せ衰えた姿を公開することで「将軍様に心配をおかけしてはいけない。われわれもガマンして頑張ろう」という作戦だった。今回のダイエットは、本人の健康上の理由に合わせついでに忠誠心の確保を狙ったということだろう。(黒田勝弘)