政治月旦

立民の性犯罪議論 身勝手な「自由」振りかざす勢力

性交同意年齢に関する発言について報道陣の取材に応じ、謝罪する立憲民主党の本多平直衆院議員=6月8日午後、国会内(田中一世撮影)
性交同意年齢に関する発言について報道陣の取材に応じ、謝罪する立憲民主党の本多平直衆院議員=6月8日午後、国会内(田中一世撮影)

「50歳近くの自分が14歳の子と性交したら、たとえ同意があっても捕まることになる。それはおかしい」

立憲民主党の本多平直衆院議員(56)が、党の性犯罪刑法改正ワーキングチーム(WT)会合で語った言葉には耳を疑った。14歳の娘を持つ父親として、怒りを通り越して悲しくなった。50歳と14歳では、社会的な知識も経済力も大差がある。若年者の意思も尊重する-。そんな耳障りのよいことを言ったつもりかもしれないが、裏返せば妊娠の可能性がある行為について、成人と同じ結果責任を担わせることになる。

発言は法律上、性交の同意能力があるとみなす「性交同意年齢」の引き上げを議論している際に飛び出した。今の刑法で理由に関わらず性行為が処罰されるのは、相手が13歳未満に限られる。基準は明治時代に制定されたもので、主要7カ国では最も低い。

最近は悪意を持った成人がSNSなどで中学生に近づき、言葉巧みに性犯罪に巻き込むケースも増えている。このため、法務省は昨年、「性犯罪に関する刑事法検討会」を立ち上げ、性交同意年齢の引き上げも視野に議論を進めている。

平成29年に性犯罪に関する刑法を抜本改正した際にも引き上げは見送られた。なぜか。問題のWTで、本多氏と激論を交わした大阪大大学院の島岡まな教授(刑法)は、本多氏の言動を振り返ればその一因が理解できると語る。

島岡氏はWTで、自由を重んじるフランスでも性交同意年齢を15歳と設定した経緯などを説明し、「どんな理由があっても成人による中学生との性交を処罰するのが世界の流れだ」と訴えた。これに対し、本多氏は「年の離れた成人と中学生にも真剣な恋愛関係が存在する場合があり、処罰には懸念がある」などと反論し、最後は怒鳴りながら「50歳近くの自分が~」と問題の発言をしたという。島岡氏は絶句した後「先進国なら捕まります」と言い返した。

本多氏は6月5日付本紙朝刊で発言を報じられた後、「成人を処罰対象とする必要性を認識している」としつつ、「限界事例や特異な例外事例など、緻密な検討が必要だと考えた」と釈明し、発言を撤回した。ただ、島岡氏は「本多氏は確信的に(成人を例外なく処罰対象とすることに)反対していた」と話す。

別の日のWT会合では、本多氏と別の議員が「中学生の自由な意思に基づく性交を罰したら憲法違反の疑いがある」などと主張していた。「中学生から成人を口説いて恋愛関係になり、性交に至る例もある」という成人への擁護論もあったという。

島岡氏は「こうした主張をするのは大概が大人の男性で、無意識かつ都合よく自由の定義をはき違えている」と指摘する。「自分たちの権力や地位の高さに無自覚で、悪意がないから始末も悪い。たとえ中学生が『自由な意思』と思ったとしても、それは成人にコントロールされやすい『不自由』であることが多い」とも語る。

一連の報道後、中学時代に男性教諭から性被害を受けた石田郁子さん(43)から「立民に体験を伝えたい」と会社に電話があった。石田さんは「私は教諭から『そのうち結婚を前提とした付き合いになる』といわれた。当時は『先生のいうことは絶対』とも思ったが、今から考えると幼かった」と打ち明ける。

性被害だと理解できたのは、37歳になってからだった。16歳の少女が被害を受けた性犯罪の裁判で、加害者の養護施設職員が「同意があった」と弁明する様子を見聞きし、「自分の体験に似ている」と感じたという。昨年12月の東京高裁判決でようやく被害が認定され、教諭の所属する札幌市教育委員会は今年1月に懲戒免職処分を下した。

石田さんは今回の刑法改正議論で「未熟な中学生を保護する視点がおろそかになってはいけない」と考え、先月、立民の福山哲郎幹事長や泉健太政調会長と面会した。「ぜひWTで話をさせてほしい」と頼んだが、福山氏は消極的な姿勢を示したという。

「中学生と成人の真剣な恋愛に基づく性交を罰するな」という主張は、性交同意年齢の見直しを議論するたびに特定の勢力から提起される。立民は最終的に同意年齢を16歳に引き上げるよう求める中間報告書を上川陽子法相に提出したが、本多氏への擁護論は消えない。

「大人の男性が勝手に中学生を美化している」と語る石田さんに政治はどう答えるか。

(政治部次長 水内茂幸)

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