次期衆院選が秋までに迫る中、伊吹文明元衆院議長(京都1区)ら自民党衆院議員の引退表明が相次ぎ、後任候補未定の空白区は10超に拡大した。伊吹氏に続く議員がさらに出てくる可能性があり、候補者調整がもたつけば、自民にとって〝空白苦〟になりかねない。一方、立憲民主党からは枝野幸男代表を支えてきた重鎮らが政界を去る予定で、党内力学の変化の有無が注目されている。
「補充に対して何ら心配はない。必ず立派な候補者を立てる」。自民の二階俊博幹事長は6月29日の記者会見で、現職の引退表明に伴う空白区の解消に自信を見せた。
自民からは先の通常国会終了後、衆院選不出馬の意向を示す議員が続出した。伊吹氏は同28日、自身やスタッフが高齢であることを理由に不出馬を表明。塩崎恭久元厚生労働相(愛媛1区)も同19日、後進に道を譲る考えを明らかにした。
世代交代だけではない。小此木八郎前国家公安委員長(神奈川3区)は8月の横浜市長選に立候補を表明。女性問題を報じられた安藤裕衆院議員(京都6区)や、党の「定年制」で重複立候補できない冨岡勉衆院議員(比例九州)も出馬を見送る意向を示した。
また、新型コロナウイルスの緊急事態宣言下の夜に東京・銀座のクラブを訪問し、現職3人が離党した神奈川1区、大阪8区、奈良3区も空白のままだ。
現在、289選挙区のうち自民の空白区は10以上ある。新人候補が選挙区を引き継ぐ場合、名前の浸透や後援会づくりに一定の時間を要するため、党幹部は「衆院選直前にこんなに空白区がある状況は記憶にない」と危機感を示す。
立民からは赤松広隆衆院副議長(愛知5区)、荒井聡元国家戦略担当相(北海道3区)、佐々木隆博元農水副大臣(同6区)が引退を表明した。後継は決まっているが、3人とも重鎮やベテランのため党内力学が変わる可能性が指摘されている。
特に旧社会党出身で、党内最大グループ「サンクチュアリ」を率いる赤松氏の引退は尾を引く可能性がある。官公労系が多い同グループの存在感低下は必至で、赤松氏を後ろ盾としていた枝野氏の党運営にも影響しかねない。昨年9月に合流した旧国民民主党議員ら保守系の影響力が増すとの見方もある。
国民民主党は知名度が高く比例代表東京ブロックで出馬予定だった山尾志桜里氏が先月、「別の立場で新しくスタートしたいことがある」として次期衆院選への不出馬を発表した。(広池慶一、田中一世)