評伝

「突破力」で改革指揮、直言の人 経団連前会長・中西宏明氏

経団連の中西宏明前会長(平尾孝撮影)
経団連の中西宏明前会長(平尾孝撮影)

4月のオンラインでの記者会見が、中西さんの姿を見た最後となった。自身の病状について「ほぼ治療が終わり、体調もいい。新型コロナウイルス感染(の恐れ)がなければすぐにでも退院できるんだ」と話していたが、結局復帰はかなわなかった。

平成30年5月に経団連会長に就任したときから、持続性を重視した新たな資本主義のあり方を模索。企業が株主だけでなく、地域社会や社員を含む関係者すべてに配慮する「ステークホルダー資本主義」の定着も目指してきた。

そうした自身の考えを色濃く反映させたのが昨年11月発表の新成長戦略だ。訃報を受けて記者団の取材に応じた後任の十倉雅和会長は「国士というか、国を憂う経営者、侍のような方」とたたえ、遺志を受け継ぐ決意を示した。

中西さんといえば危機に臨んでの「突破力」だ。日立製作所では8千億円近い連結最終赤字を計上した直後に社長となり、聖域なき改革で見事に再生を成し遂げた。困難な場面に直面したときほど前向きさを失わず、ある社員は「明るく豪快。いつも笑っていた」と評する。なぜ笑顔を絶やさないのか尋ねると、「トップが仏頂面だと(改革が)進まないだろう」と返されたそうだ。

「信念の人」だけに直言居士ぶりが話題にもなった。米国のトランプ前大統領が新型コロナに感染した際には「不注意ではないか。ある意味、典型的な自業自得」と手厳しかった。

山歩きと庭いじり、料理が趣味と話していたが、実際は仕事人間。周囲が「いつ休んでいるのか」と不思議に思うほどだった。

治療用のチューブをつけたまま、病室からオンラインで会見していた姿を思い出し、今はゆっくり休んでいただきたいと、心から願う。(平尾孝)

中西宏明氏が死去 前経団連会長、改革を推進

会員限定記事会員サービス詳細