話の肖像画

デザイナー・コシノジュンコ(81)(1)コロナ禍、今こそデザイン再考

(松井英幸撮影)
(松井英幸撮影)

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《新型コロナウイルス禍により、「おしゃれ」は少し遠い存在になってしまった。外出する機会が減り、服に対する価値観も変わったかもしれない。それでもファッションは生活に色彩をもたらし、時に背中を押してくれる。長年、モードの第一線を走り続け、国内外から高い評価を受けるデザイナーの目に、「今」はどのように映るのか》


コロナ禍前、私の目線は常に海外にありました。それが昨年2月にパリに行って以来、国外には出ていません。こんなにも長く日本で過ごすのは、デザイナー人生で初の経験です。

とはいえ、ショックはありません。なにもできないと嘆く必要もない。今は収束を見据えて、準備し、ためるときだと思っています。

ファッションも、準備期間を設けたっていいのではないでしょうか。新しい服を買うだけがおしゃれではないはず。「いつか」のおしゃれのために、タンスやクローゼットの中を整えてみるとか。それもファッションを楽しむことの一つです。整理してみると、案外いい服が出てきたり、すてきなコーディネートを思いついたりするかもしれない。物理的な整理が、気持ちの整理にもつながります。

コロナによって文化や芸術といった精神的なものが壊される怖さがある。ただ、何か新しい文化が生まれるときには、「破壊」が付きものだとも考えています。

たとえば欧州ではペストの流行後、ルネサンス(14~16世紀)がやってきた。古典文化を再興するという革命的な新しい時代の始まりです。かたや日本でも、「応仁の乱」(1467~77年)以降にいわゆる日本的な文化が発展したという歴史があります。

ポストコロナの時代には、過去の成功や実績にとらわれない新しい時代がやってくるのではないでしょうか。

デザインの原点は、整理整頓していったんゼロにすること。そこから、プラスやマイナスを繰り返して見極める。くしくも、コロナによってゼロベースが出来上がっていますから、今こそデザインを再考する時期だと思います。


《文化への功績が認められ、5月、フランスの最も権威ある国家勲章「レジオン・ドヌール勲章」のシュバリエが授与された》


モードの国・フランスから栄誉ある勲章をいただき、こんなにうれしいことはありません。コロナ禍での受章に、背中を押してくれたような気持ちです。