クレパス画の仕上げ 塗る、削る、溶かす、弾く 技法駆使して

目の部分に記者の顔写真を貼った=大阪市北区のサクラアートサロン大阪(南雲都撮影)
目の部分に記者の顔写真を貼った=大阪市北区のサクラアートサロン大阪(南雲都撮影)

「第31回 全日本アートサロン絵画大賞展」(産経新聞社など主催、サクラクレパスなど共催)への出展作品の制作もいよいよ大詰め。塗る、削るは当たり前。貼る、溶かす、弾(はじ)く、マスキング技法…とあらゆる手法を使って仕上げていく。そして、完成までの一番の難関は「納得」という自分自身の気持ちだったのです。

本塗りのメインは「マグマ大使」。マグマの金色はクレパスで作っていく。

基本は黄色。その上に黄土色、茶色、こげ茶色と塗り重ね、そして削る。輝きを出すには再び黄色を塗り、一番光っている部分に白を入れ、陰には黒。髪の毛は塗り込んだ部分を竹べらや竹ぐし、ペインティングナイフで削る。流れるように大胆にサーッと。そのとき田伏勉先生から恐れていた言葉が飛び出した。

「じゃあ、マグマ大使の目を描こか」。目は難しい。描くのが怖い。できるなら描きたくない。髪で目を隠そうとさえ思っていた。

「サルバドール・ダリは目の中に自分の顔や風景画を描いたんやで」

おもしろそうやないですか! マグマの目は小さくて、その中に自画像をうまく描くことはできないが、小さな顔写真は貼れる。誰も気が付かない自分だけの楽しみ。俄然(がぜん)、目を描くことにヤル気が出た。

瞳の中に映る自分

次は東京タワーだ。鉄骨をどう描くか。「削り」を駆使し、黄色に赤を塗り重ね削って描くことに。ここで先生のアドバイスだ。

「細かく描き過ぎたらアカンよ。図案になってしまう。細かく描いて惜しげもなく削る。それがコツや」

出展作品だけに、手は出さないが口はよく出す。先生の熱意に応えなくては…と気合が入った。

鉄骨の光の当たった部分には、ライターで温めたペインティングナイフの先でクレパスの白を削り取って、溶けているうちに素早く塗る。すると細く鋭い線が描けた。

マグマを呼ぶ笛は、本物と同じ白と赤と青で描く。使い古した感を出すために陰を多く入れ、ペインティングナイフの先で赤をピンと弾いて削り「剝がれ」を表す。さらに左下の「スカイライン2000GT」のテールランプの部分には黒を塗り、ネームを削って入れた。ボディーには溶かした白を盛り上げた。

やり過ぎないのがコツ

どんどんと完成に近づいてくる。先生がお皿とブラシを何本か持ってきた。まさか、以前に「これを汚れと見るか、味と見るか」といって先生がやった、ブラシのピンピン弾き? 「正式にはドリッピングとかスパッタリングという。今回は黒やないよ。紫に緑と青を混ぜたのを飛ばす。味が出るからやってみ」

ここは先生の口癖「この仕事、50年もやってきとるんやで」という「経験」を信じるしかない…。

紫と緑と青のクレパスをお皿に削り、揮発油で溶かしてブラシで弾いた。するとどうだ、なんともいえない趣が出た。さらに黄色と白を混ぜ、揮発油で溶かしてこれまたブラシでピンピン。すると東京タワーの下からビルの谷間にかけて、道路のライトが輝いているような趣が出たのである。さすが、先生!

そしてマグマが持つ笛のひもを描いた。以前、先生から教わった「マスキング技法」を使った。

マスキングテープを2枚貼り、その間に白を塗り込む。すると細い線が描けるのだ。すべて手描きの絵の中に幾何学的な直線は違和感があるのでは-との不安はあったが、テープを剝がして驚いた。笛のひもが作る三角形が、違和感どころか絵に「奥行き」と「動き」を生み出してくれたのである。

完成までもう少し。あそこにも手を入れたい、あの部分も直したいという衝動に駆られる。

「失敗はやり過ぎること。どこまでいっても納得はできんもんよ。自分の心と折り合いをつける。それが大事だよ」

深呼吸して左下に竹べらで自分のサインを入れた。「完成です!」「やったね!」。ずっと応援してくれていたレディーたちの拍手がうれしかった。(田所龍一)