主張

種苗法違反事件 新品種守り海外流出防げ

高級ブドウ「シャインマスカット」の苗木を許可なく販売目的で保管していた愛媛県西条市の会社員の男が、種苗法違反容疑で警視庁に書類送検された。

ブランド果実などの海外流出を防止する改正種苗法が今年4月に施行されて以降、同法での摘発は初めてである。

ブドウなど新品種は長年にわたり品種改良を積み重ねてきた国や自治体、生産者らの努力の結晶であり、日本の知的財産だ。新品種が海外に流出すれば日本の農家は大きな打撃を被る。捜査当局だけではなく、関係者らも違法行為に目を光らせていく必要がある。

男は5月23日、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)が品種登録しているシャインマスカットの苗木4株を許可を得ないまま販売する目的で保管し、育成者権を侵害した疑いがある。

警視庁がサイバーパトロールで義務付けられた表示のない苗木を見つけ発覚した。

男は、ホームセンターで購入した家庭菜園用のシャインマスカットの苗木を自宅の庭で栽培し、剪定(せんてい)した枝を育て直して販売していた。約40株をフリーマーケットサイトで販売し、約6万3千円を売り上げたとみられる。男は「小遣い稼ぎだった」と供述しているが、この行為が生産者らに甚大な被害をもたらしかねない。

今回の事件で浮き彫りになったのは、苗木を接ぎ木すればいくらでも増やせるという事実だ。とりわけ懸念されるのは、販売された苗木が海外に流出する可能性があることだ。シャインマスカットは平成29年ごろから、中国で「陽光バラ」「香印翡翠(ひすい)」などの名で広く販売されているのが確認されている。流出した新品種が海外で産地化されれば、生産者らが本来得られる利益が失われてしまう。

逆輸入されれば、生産者の開発努力が無駄になり、品種改良への意欲を減退させよう。シャインマスカットは商品化に20年以上かかった。農林水産省の試算だとイチゴだけでも5年間で220億円以上の経済的損失が出た。

シャインマスカットを開発した農研機構が、「長い期間と多くの労力をかけて開発したシャインマスカットを無許諾で増殖する行為は大変遺憾だ」とコメントしたのは当然だ。

警視庁は購入者の特定を急ぎ、海外流出を防ぐ必要がある。

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